国立映画アーカイブ運営費交付金2億円以上削減「存続問題になりかねない危機感」クラファン開始

国立映画アーカイブ(撮影・村上幸将)

独立行政法人国立美術館の映画専門機関・国立映画アーカイブは25日、都内で会見を開き、この日からクラウドファンディングを開始したと発表した。財政構造を変え、安定して運営していくためで、プロジェクト目標の支援金額は1億円。

背景には、深刻な予算不足がある。文化庁が、国立博物館や美術館の運営について掲げた中期目標で、自己収入割合が未達成の場合、閉館も含めた再編の対象となることなどが盛り込まれた。その方向性をを受け、文化庁から独立行政法人国立美術館に支給され各美術館に分配される運営費交付金配分額は、令和6年度の6億8291万7000円から今年度は3億5856万円と2億円以上、大幅に減額。並行して、自己収入目標額は5442万1000円から2億4873万円に跳ね上がった。

冨田美香学芸課長は、経費削減にも取り組んでいるとした上で「人件費も任期満了の人の後任を採らない形で削減。光熱費、設備投資費を積み上げ、固定費は今年度は4億4172万円。運営交付金配分額に足りていません。固定費にも満たない危機感を昨年度から持っています」と説明。「昨年度末の残予算を使ってTシャツを作ったりも含め、自己収入を上げようとやっていますが、この状況が来年度以降も続く場合は、日本唯一の国立のフィルムアーカイブが存続の問題になりかねないとの危機感があります」と訴えた。

質疑応答で「これから先、永続して施設を運営していくに当たって、立ちゆかなくなる危険があるのか」と質問が出た。栩木(とちぎ)章館長は「財政構造と、ミッションとしてやらなければならないことには誤差がある。何とかして工夫して、基幹事業として保存を進めていきたい。それが現時点でできないところから大きな危機感を感じ、市民に訴えたい」と答えた。

一方で「予算の話になると『国立映画アーカイブって何やっているの? どこにあるの?』と言われる。一体、何がミッションで何がやりたいかを伝えたい。クラウドファンディングは金額のこともあるが、どれだけの人が我々に注目してもらえるか」と、周知してもらう1つの手段としてのクラウドファンディングに期待。「未来の人のために必要な投資だと、ちゃんと説明し理解してもらいたい」とも語った。

取材陣の間からは、そもそも、日本は隣国の韓国と比較しても文化予算が少ないという声も出た。その中で、上映企画などを行う際の入場料を上げる可能性についても質問が及んだ。栩木館長は、同じ国際フィルムアーカイブ連盟に属し、関係性の深い韓国映像資料院の例を挙げ「韓国映像資料院の上映会は無料です。我々も今の入場料を上げなければいけない必然性はあるが、ショックだしじくじたるものを感じる」と吐露した。

その上で「ここに来ると『ある監督のデビュー作から最新作まで網羅し、理解できる』という声がある、それは映画館では難しい。コマーシャルな世界でできないことを、我々はやっている」と、一般の映画館とは性質の違う施設だと指摘。「入館料で一定の収入増はできても、ヒット映画をかければ良いというものではない」と強調した。

クラウドファンディングは「使命は人類の記憶を繋ぐこと。国立映画アーカイブの活動存続にご支援を」とのタイトルで、この日から9月23日午後11時までクラウドファンディングサービス「READYFOR」にて実施。集めた支援金の使徒は、映画の収集、保存、修復、復元、上映、展示等の公開事業等。特定の資料の復元、整備ではなく全般に使用する。

【村上幸将】

◆国立映画アーカイブ 日本で唯一の国立の映画専門機関で独立行政法人国立美術館の1館。1952年(昭27)に設置された国立近代美術館の映画事業(フィルム・ライブラリー)に端を発し、70年の機能拡充による東京国立近代美術館フィルムセンター開館とその後の活動を経て、18年に独立行政法人国立美術館の6番目の館として設立。映画を芸術作品のみならず、文化遺産、歴史資料として網羅的に収集することを目標に、日本映画を最優先み時代を問わず散逸や劣化、滅失の危険性が高い映画や、上映や国際交流に必要な映画を優先的に収集。図書、ポスター、スチル写真といった映画関連資料(ノンフィルム資料)も、網羅的な収集・保存する活動を中心に、公開事業、教育普及事業、映画を通した国際連携事業を展開。