長塚京三が、81歳の誕生日を翌日に控えた5日、東京・グランドシネマサンシャイン池袋で行われた、濱口竜介監督(47)の新作映画「急に具合が悪くなる」公開記念トークイベントに登壇。同監督と、劇中演劇指導、ワークショップ監修の砂連尾理(じゃれお・おさむ)氏と対談を行う中で、祝福された。
長塚は、濱口監督から「おめでとうございます。ずっと本当にお仕事したい方で、ご一緒できた。何よりうれしかったのは、長塚さんは、演じれば演じるほど元気になっていく。百寿まで一緒にお仕事できれば、とてもうれしい」と祝福された。その上でベルギー出身のフランスの俳優ビルジニー・エフィラ(49)が「悪女を演じたい」と言っていたことを引き合いに「悪い男を演じて欲しい」とリクエスト。砂連尾氏からも「立派な俳優は立派なダンサーなんだなと。真剣に生きているんだな、と学びにさせてもらった」と賛辞を送られた。それらを受けて「これを励みに、恥ずかしくない80代を送りたいと思います」と宣言した。
「急に具合が悪くなる」は、がんの転移を経験しながら生き抜く哲学者の宮野真生子さんと、臨床現場の調査を積み重ねた人類学者の磯野真穂さんが交わした20通の往復書簡を元にした、19年の同名共著(晶文社)を原作に、濱口監督が脚本を執筆。カンヌ映画祭(フランス)コンペティション部門に出品され、主演の岡本多緒(41)とダブル主演のエフィラが女優賞を共同で受賞。岡本は同賞を日本人として初受賞した。長塚は、岡本が演じた真理とエフィラが演じたマリー=ルーを引き合わせる重要な役どころとして、真理が演出する舞台に出演する俳優の清宮吾朗を演じた。吾朗の孫の窪寺智樹を黒崎煌代(24)が演じた。
長塚は、ちょうど1年前、撮影が行われたフランスで80歳の誕生日を迎えた。撮影では、本番を何テイクも繰り返したが、長塚は「何度も繰り返すもんじゃないとは思いますけど、僕は何度もやるのが好きなんです。やっても納得しないんだけど、時間があれば繰り返したい」と笑顔で振り返った。
それを受けて、砂連尾が「こんなに繰り返させていいのか?」と振り返ると、濱口監督も「フランスで80歳のお誕生日を迎えられた、80歳の方にどれだけやらせているのかしらと思いながらやった」と続いた。その上で「繰り返しはNGではない。一応、2台のカメラで撮っておりますが、ポジションの数、割る2くらい繰り返している。長塚さん、1テイク、1テイク、手を抜くことはなく」と、長塚の渾身(こんしん)の芝居を絶賛。「フランス人の俳優も『20、30テイクやっている。精神力が体力を凌駕していることが分かるので心が震える』と言っていた」と、フランスの有名俳優まで絶賛していたと明かした。
◆「急に具合が悪くなる」 フランス、パリ郊外の介護施設「自由の庭」の施設長マリー=ルー・フォンテーヌ(ビルジニー・エフィラ)は、入居者を人間らしくケアすることを理想としつつ、人手不足やスタッフの無理解などに悩まされている。そんな中、日本人の演出家・森崎真理(岡本多緒)に出会い、がん闘病中の真理の描く演劇に勇気をもらう。同じ名前の響きを持つ偶然に導かれて、交流を始めた2人だったが、ある時、真理が「急に具合が悪くなる」。真理の病の進行とともに、2人の関係は劇的に深まり、互いの魂を通わせ合うようになる。真里のモデルとなった宮野さんは、原作の出版2カ月前の19年7月に42歳の若さで亡くなった。