相米慎二監督「魚影の群れ」ベネチア映画祭クラシック部門選出、「お引越し」23年最優秀復元賞

「魚影の群れ 4Kデジタルリマスター版」(C)1983/2026松竹株式会社

2001年(平13)に53歳の若さで亡くなった、相米慎二監督の代表作の1つで、緒形拳さんが主演した83年「魚影の群れ」のデジタルリマスター版が、9月2日にイタリアで開幕する世界3大映画祭の1つ、第83回ベネチア映画祭クラシック部門に選出された。製作・配給の松竹が6日、発表した。

同部門は12年に設立され、過去1年間に復元されたクラシック作品の中から特に優れた作品が選出される。相米監督では、23年に「お引越し」(93年)が出品され、最優秀復元賞を受賞。松竹作品としては通算8回目の選出。選出された19本のうち、日本からは唯一の出品となった。

「魚影の群れ」は作家・吉村昭の短編小説集の映画化作品。青森県下北半島最北端の漁港を舞台に、厳しい北の海で小型船を操り、孤独で苛酷なマグロの一本釣りに生命を賭ける海の男達と、寡黙であるが情熱的な女達の世界を描いた。緒方さんのほか夏目雅子さん、佐藤浩市(65)五代目三遊亭円楽さん、十朱幸代(83)らが出演した。

今回、4Kデジタル修復は、松竹映像センターで画・音声ともに行った。現存する35ミリオリジナルネガから4K解像度(4096×3072)で高精細スキャンしたデータを元に、フル4K環境での映像修復により、公開当時のオリジナル版フィルムが放つ輝きを現代によみがえらせることを目指した。特に物語の核となる海上のシーンでは、フィルム上に付着したダストゴミや傷の除去に細心の注意を払い修復。撮影監督の長沼六男キャメラマンが監修し、巨大マグロとの死闘に命を懸ける男たちを驚異的な長回しで映し撮った過酷な現場の熱を再現した。音声もオリジナル音ネガから96kHz24bitでデジタイズ後、経年劣化によって生じたノイズを丁寧に処理。さらに音声最終仕上げは、音響効果を担当した故・小島良雄さんの娘で、自身も音響効果として活躍中の小島彩さんと、若き相米監督と日活時代を共に過ごした録音技師の小野寺修さんが監修した。

◆「魚影の群れ」 津軽海峡のマグロの一本釣り漁は、6月中旬から9月までが勝負。小浜房次郎(緒形拳)も大間港から船を出すマグロ漁師で、夜明けまで餌のイカをとって帰り、仮眠の後再び沖に出る。ある日、娘のトキ子(夏目雅子)が結婚したいから男に会ってくれと言う。町で喫茶店を営む男・俊一(佐藤浩市)は、養子で漁師になると言う。マグロ漁に命を賭けてきた房次郎は、さげすまれたようで腹がたった。俊一は大間に越してきて、毎朝房次郎を待ちうけ、漁を教えて欲しいと頭を下げる。10日以上も無視し続けた房次郎だが、船に乗り込むのを許したのは、トキ子が、妻アヤ(十朱幸代)のように家を出てしまうのを恐れたからだった。

◆相米慎二(そうまい・しんじ)1948年(昭23)1月13日、岩手県盛岡市生まれ。71年に中大文学部を中退し、日活撮影所に契約助監督として入所。その後フリーとなり、長谷川和彦さん、寺山修司さんらの助監督を務め、80年に「翔んだカップル」で監督デビュー。第2作「セーラー服と機関銃」((81年)は、その年の日本映画を代表する大ヒットを記録。この2作は、薬師丸ひろ子(62)を主演に迎えた商業映画だったが、長回しを多用した大胆なカメラワーク、また俳優に対する厳しい演技指導など、独特のスタイルが映画ファンの間で大きな話題を呼ぶ。82年には、長谷川さんの呼びかけでディレクターズ・カンパニーの設立に参加し、その後も「ションベン・ライダー」(83年)「雪の断章-情熱-」(85年)、唯一のにっかつロマンポルノ作品「ラブホテル」(85年)などで高い評価を受けた。85年の第1回東京国際映画祭では「台風クラブ」がヤングシネマ大賞を受賞。93年に「お引越し」がカンヌ映画祭「ある視点」部門で上映。88年「あ、春」はベルリン映画祭(ドイツ)パノラマ部門で国際批評家連盟賞を受賞。01年「風花」が同映画祭フォーラム部門で上映され、その後、新作の撮影に向けて準備を行っていたが、同年9月9日、肺がんにより53歳の若さで急逝。13本の監督作品は多くの監督たちに影響を与え続けている。