<ニッカンスポーツ・コム/芸能番記者コラム>
歌舞伎俳優尾上右近の取材機会が立て続けにあった。1つはコスメブランドの発表会、もう1つは歌舞伎座の「八月納涼歌舞伎」の取材だった。雰囲気の違う2つの取材で、共通する心意気、意外な表情を感じた。
コスメブランドの発表会は、「型破り」がテーマとなった。新商品のキャッチコピーが「型破りであれ。」であることから、パネルを破って、派手に登場した。フォトセッションではステージを飛び出したり、サービス満点。近くにいた関係者が「何でもありの人なんだね」と言っていたのを聞いたくらいだ。
「型破り」について聞かれると「型があって、秩序がある中で、そこから解放されたりはみ出すことが型破り。『型無し』と『型破り』は違うって言われる世界でやってきました」と、きっちり説明した。
型破りには、奔放さや抑えがきかないイメージがあるが、右近は型破りな人はと聞かれると、自身の曽祖父で6代目尾上菊五郎を挙げ「上品な型破りの先駆者」とし「今の歌舞伎の原型、昭和、平成、令和の歌舞伎の礎を築くような運動を起こした存在」と話した。
常々、6代目菊五郎の映像を見たことがきっかけで歌舞伎の道に進んだことを話しており、この日も思いの深さを語った形になった。
「八月納涼歌舞伎」の取材会は、共演する坂東巳之助と出席した。巳之助は右近に関し「尾上右近の熱量は、役の邪魔をしないで舞台上に出てくる」と話していた。
熱量も高いし、いつも陽の印象を持っている。会見、取材会の時も熱量高く話をしてくれる。この日もそれは変わりなかったが、そうでもない瞬間もあって興味深かった。
右近は、年々大きな役を演じ、責任ある立場になってきたことについて聞かれると「本当にありがたい、と思う気持ちが一番大きい。こういう風になりたいと思ってやってきたところがありますので、いろんなことをやらせてもらえて、夢が1つ1つ実現して、何か約束してもらっているような感覚になる時もあります」と語った。しかし「さあ、歯を磨いて寝ましょうという時、そうじゃなくなる日が来るかもしれないという不安もあります。その繰り返しで多分やっている」と話し、別の面を見たような気になった。
そういえば、昨年、別の取材で、右近に対し「ポジティブでパワフル」というようなことを言った時「ポジティブじゃないですよ! ポジティブは危険ですよ。ネガティブだから、繊細に繊細にやりたいと思う。触れた人を楽しませたい、がっかりさせたくないと思うだけです」と話していた。
いろんな表情、表現があって、触れるたびにさまざまな形で楽しませてくれることを感じている。9月に大阪で、10月に東京で行う自主公演「研の會」は10回目の今回を持って一区切りとなるという。その先、さらに活躍する姿が楽しみだ。【小林千穂】