双葉社は16日、昨年11月22日に発行した國友公司氏の著書「ルポ 路上メシ」の内容が、取材対象である野宿者・生活困窮者の立場や人権などに対する「多くの問題」を含んでいたとして、作品の回収および電子配信の停止をした上で謝罪した。
同社は同書について「不安定な生活を送る方々に欠かせない炊き出しという現場を、著者が実際に取材し、書かれた書籍です」と説明した上で、「しかしながら同書では、野宿者・生活困窮者の方を匿名および一部特徴を踏まえた仮の名前で記しましたが、事前に取材者の立場を明かさず、また事前・事後に取材の同意なく話を聞き、個人が特定されうる記述や発言を掲載することで、取材対象者の心を傷つけたり立場を危うくする記述があること、取材対象者の居場所・寝場所等に関する記述および画像により身体への危険をはらむことなどの人権に関する問題や、炊き出しにおけるコミュニティの安全性や信頼関係を毀損するおそれがあることなど、多くの問題を含んでいました」と説明。「表現においても、差別的もしくは差別を助長する危険性が非常に高い表現が複数箇所確認されました」と報告した。
その上で「社会的に弱い立場の方々について言及する際は、取材対象者の気持ち、社会的な影響について、より慎重な検討・配慮が必要でした。そうした配慮がなされないまま、本書が出版されてしまったのは、弊社および著者の視点の中に無自覚な偏見や無自覚な特権性があったことが問題の本質だと考えております」と問題を認め、「本書の刊行を決定し、社会に広めてしまったことは、ひとえに出版元である弊社の責任です。本書によって心を傷つけてしまった当事者、関係者の皆様、ならびに関係各所の皆様に深くお詫び申し上げます」と謝罪した。
同社は「よって『ルポ 路上メシ』につきましては書籍を回収し、電子書籍、オーディオブックの配信を停止することといたしました。改めて深くお詫び申し上げるとともに、今後このようなことがないよう意識の向上を図っていく所存です」とした。
同社は、生活困窮者を支援する団体から送られた抗議声明と、同社の回答書も公開。抗議声明では、國友氏の取材活動に対し「取材という目的を隠し、立場を偽って野宿者、生活困窮者に近づき、情報を集めています」と主張。「國友氏が、自身が生活保護を受けている、と虚偽の説明をしたのを聞いています」とも記した。また野宿者の現在の寝場所を詳細に記すことで「襲撃」などの危険が発生するとも指摘した。
さらに同書には「野宿者、生活困窮者を奇異な観察対象として取り上げて、揶揄、冷笑する視点から書かれています」と、侮辱的な表現があるとも訴えており「長年の習慣で体の調整機能すら進化してしまっているのかもしれない。もはや爬虫類である」「(『人に何かをしてもらったらお返しをしないと気が済まない』という人について)捕まえたネズミでも渡されたりしても困る」「聞いているだけで頭が悪くなりそう」などの引用を列記した。
双葉社は回答書の中で、これらの指摘をほぼ全面的に認め、謝罪している。