NHK、番組出演者による職員の性被害、外部からの人権侵害も対象か不明確で通報行われず

NHK

NHKは5日、都内の同局で会見を開き、職員が番組の出演者から意に沿わない性被害に遭い欠勤・休職に追い込まれた事案があったと明らかにした。さらに、当該職員が別の職場への復職を強く求めたものの受け入れず、3年余り後に異動と、不十分な人事的な対応があったとことも公表。例外的な対応を認めると他の休職者などへの対応に影響が広がると懸念、前例踏襲の対応に終始したことなど、指摘された問題点も明らかにした。

NHKは、25年4月にA職員から「番組出演者からの性被害により体調を崩して休職し、フラッシュバックなどもあるため、所属部局以外での復職等を希望したが聞き入れられなかった。なぜ実現されなかったのか確認したい」などと労働組合を通じて、申し入れを受けた。同5月に外部の専門家等からなる「職員等の権利・利益の擁護等の在り方をめぐる調査検討委員会」を設置。この日の会見では、同委員会が認定した事実を公表した。

調査検討委員会が認定した事実によると、A職員は番組の出演者などとの懇親会後、当該出演者により意に沿わない性被害に遭い、体調不良となり欠勤・休職に追い込まれた。被害から1年数カ月後に、職場に被害をうち明け、被害当夜のことがフラッシュバックするなど精神状態が悪化するため別の職場で復職できるよう配慮を求め、主治医や産業医も同様の提案をしたが、NHKは人事局などの担当者が協議した結果、現所属での復職が原則だとして認めなかった。A職員は復職後も、繰り返し異動を求め、被害から3年あまり後に希望した職場の1つに異動した。A職員は、意に沿わない性被害の影響によるPTSDと診断されている。

質疑応答で、A職員が被害から1年数カ月後まで、職場に被害をうち明けられなかったり、3年半も異動が認められなかった体質、空気が局内に醸成されているのでは? と質問が出た。小形修一理事は「深刻な人権侵害ですので本来、コンプライアンス担当の方に連絡がいき、組織として、きちんと対応を取るべき問題。実際のところ、通報がなかったことは事実。この事案が発覚以降、順次、窓口の整理を充実させていこうとしている最中」と答えた。その上で「それぞれの担当者の狭い範囲だけで、ものごとを考えてしまい、組織としてどうあるべきか、残念ながら欠けていた」と反省した。

元々、通報窓口は設置されているが、小形理事は「外部からの人権侵害事案も通報、相談の対象になるのか、というところが不明確で、通報が行われず窓口が機能しなかった」と口にした。出演者、取材先までも含め、体制、対応方針の明確化に取り組んでいるとした。清水聡リスクマネジメント室長は「人権救済メカニズムの整理、ハラスメント防止規定に出演者、取材先なども含めたカスハラについても位置付けていく。窓口の周知含め再徹底していく。通報ルール、ルートは整備しているので改めて再徹底するのは必要」と補足した。

調査検討委員会からは、問題点として

<1>復職場所について「特段の配慮」がなされなかったこと

本件被害が深刻なものであったにもかかわらず、「特段の配慮」がなされなかった。例外的な対応を認めると他の休職者などへの対応に影響が広がると懸念、前例踏襲の対応に終始した。

<2>組織的な対応が欠落していたこと

関係者間において、検討の前提となる「ファクト」と「事案の深刻さ」に関する共通認識が形成されなかったこともあって、関係者間で対応方針や役割分担に関する検討がなされず、上記<1>の不適切な対応となった。

<3>再発防止策等の検討の欠如

本件は、人権や人格を侵害・毀損(きそん)する深刻なものであったにもかかわらず、リスクマネジメント室や担当理事らに本件が報告されることはなく、組織として再発防止策の検討がされることもなかった。

が挙げられた。

また、今回の問題に至った原因としては

<1>人権方針の内容、その具体化と人権意識の不足

・人権尊重の原則が協会の規定や制度に具体化されていなかった

人権DD(デューディリジェンス)の未実施

人権意識の不足

<2>対応部署の不明確さと通報ルートの不十分さ

リスクマネジメント室が扱う「リスク」はコーポレートリスクに限られるかのように認識されており、職員が受けた人権侵害も扱うということが明確になっていなかった。

外部者による人権侵害事案を、どこに相談・通報すればよいのか、通報ルートが不十分で周知も不足していた。

<3>復職場所等についての過度とも思われる原則主義

厚生労働省が公表している復職支援手引きに記載してある「元の職場への復帰」の原則の趣旨について理解不足だった。本来は、職場や主治医などから十分情報を集め総合的判断をすることによって「他の適応可能と思われる職場への異動を積極的に考慮した方がよい場合がある」とされていたが、原則を守ること自体が目的化していた。

<4>主治医、産業医の意見の軽視

主治医も産業医も所属部局以外での復帰を求めていたが、医師の意見と異なる判断をするための慎重な検討を行った形跡がなかった。主治医や産業医の意見を軽視したと言わざるを得ない。

<5>PTSDへの理解不足

PTSDの症状に対する理解不足に起因して、本件被害の打ち明けが本件事象から1年数カ月後であったことなどを捉えて、本件事象の事実に対する懐疑的な見方が発生・継続していたものと認められる。

<6>職員の消極的姿勢

ヒアリングした関係者の多くは、「自分にできることはやった」と述べているが、A職員の心情に配慮した処遇の実現に向け汗をかく職員はいなかった。関係した職員は本件事象を自らの担当範囲のみで捉え、組織の問題として俯瞰(ふかん)して捉えた職員はいなかった。

組織間のコミュニケーションが不足しており、「本来、共有されるべき担当部局に共有されているか」という問題意識を持って一歩踏み出す姿勢が必要だった。

<7>組織の構造的な機能不全とその認識不足

自らの職務に対応している中で、「組織全体で見ると、必要な対応が十分に行われず、表層的な問題解決にとどまっている」という事実には気付いていなかったものと思われる。

との指摘を受けた。