吉永小百合(81)が9日、都内の新文芸坐で行われた第15回「戦争の記憶と記録を語り継ぐ映画祭」で主演映画「母べえ」(08年)、「母と暮せば」(15年)の2本の主演作が上映され、登壇した。両作を手がけた山田洋次監督(94)とトークした。
この日は、長崎原爆の日で、上映された15年の映画「母と暮せば」で、吉永は助産婦の福原伸子を演じた。長崎医大の授業中に原爆投下で亡くなり、3年後に亡霊となって母の前に姿を現す次男・浩二を二宮和也(43)が演じた。山田監督は、聞き手を務めた映画評論家の立花珠樹氏から「日本が被爆国なのに、核を持っても良いような意見も聞くようになってきた。原爆に関する今のお考えは?」と聞かれると「日本は世界で唯一の被爆した国で、たくさんの悲惨な例を僕達日本人は知っている。原子爆弾を製造するのをやめよう、地上からなくそうという運動に日本は一番先頭に立つべき役割があるのではないでしょうかね」と答えた。
また「近年…特に今年、ものすごい勢いで国の形、在り方が変わっていって、戦後日本が歩んできた道が、急に変わって怖いような感じがしている。映画の力、できることはあるか?」と質問が出た。山田監督は「そんな力は、映画にはないと思いますよ。僕らは、そんなことをモチーフでは映画は作っているわけではない」と1度は答えた。その上で「例えば『寅さん』(『男はつらいよ』)を作る時だって時々、戦争のことを考えないことはない。寅さんは、ばか男だから、戦争についての意見など持っていないだろうけど、映画を見て大笑いした人が、戦争のニュースを見て『寅さん』を見て面白いという気持ちと重ねて考えると、原爆がいかに恐ろしい、人間の作った大きな罪か分かるんじゃないですかね」と語った。
さらに立花氏から、令和8年熊本地震の被災地へのメッセージを求められると「災害にこそ、国を挙げて、国の力で被災者を応援する必要がある」と即答。「国、国家というのは危険な言葉で、使い方によっては間違った方向に向かうことがある。最近の政治では時々、日本の国、国家、日の丸という言葉を、間違った方向に使われているけども、国家なんてものは、本当に信頼に足るべきものか、大いに疑問を持つべき」と持論を展開。「震災の時にこそ、僕たちは国の力を信頼したいし、見直したい…日本は、そういう国であって欲しい」と訴えた。山田監督の熱い訴えに、場内から拍手が巻き起こった。