金田一耕助80周年で完全新作「八つ墓村」 自信をのぞかせる尾上松也…鍵を握る存在は?

八つ墓村プレミアナイトに臨む尾上松也(2026年8月撮影)

<ニッカンスポーツ・コム/芸能番記者コラム>

作家・横溝正史の代表作を映画化した「八つ墓村」が、9月18日に公開される。尾上松也(41)が名探偵・金田一耕助役で主演する製作の第一報を6月に解禁してから、継続して情報を発信してきた。その流れで、18日に都内で開かれた公開前初のイベント「プレミアナイト」を取材した。

1946年(昭21)に雑誌「宝石」で連載された「本陣殺人事件」に、金田一が登場して80周年の今年、完全新作として清水崇監督(54)が作り上げた「八つ墓村」は、舞台を戦後の昭和から令和に移す。奥智哉(22)が演じる名家・田治見家の遺産相続人となった井川辰弥は、原作の化粧品会社社員から内定ゼロ、彼女なしの大学生と設定を変更された。

過去3度、映画化され、金田一は51年版は片岡千恵蔵さん、77年版は渥美清さん、96年版は豊川悦司(64)が演じ、78年のTBS系ドラマでは古谷一行さんが演じた。記者は情報解禁の原稿を書く際、時代を置き換えることと、松也がどのような金田一像を構築したかに興味があった。関係者を取材したところ、製作陣が「全く新しい金田一耕助を作りたい」という思いで松也を起用したことを確認。松也も期待に応え、普段のチャーミングな姿と、事件の核心に迫るシリアスな姿とのギャップがかいま見える、人間らしくて共感できる等身大の金田一を演じたと聞いた。「まさに本作ならではの見どころ」と強調した製作陣の言葉から、松也が演じた金田一には相当、自信があるのだと受け止めていた。

一方で、現代のジャパニーズホラーの第一人者と定評のある清水監督にしても、日本のホラーの伝統的な作品を、完全新作として作ることへのプレッシャーはあっただろう。7月19日公開の「口に関するアンケート」、同24日公開の「だぁれかさんとアソぼ?」に続き、配給の松竹で今年3作目となるが、解禁時に出した「金田一ファンに恐縮しつつ、覚悟して新たな『八つ墓村』、金田一像に臨みました」とのコメントからも、重圧のようなものは感じ取れた。

清水監督は、どの舞台あいさつでも、軽妙なコメントを交え、場内を沸かせる。ただ、プレミアナイトの冒頭では「僕自身が、監督として引き受けるかどうか、すごくハードルの高い有名過ぎる原作。過去の映画作品も好きだったので、自分が引き受ける重荷を、どう受け止めるべきか、悩んだ末に引き受けました」と、いつもより神妙な面持ちで語った。さらに「誰が監督し、演じても賛否両論が起こるのは分かっているんですが、映画史の一部に収めていただけるかどうかは皆さん次第だし、興行成績によるという現実的な側面も見据え、プロモーションに取り組んでおります」などと、慎重なコメントに終始した。

その中、松也も「僕自身、これだけ有名な作品で、これだけ有名な役柄を演じるのは非常にプレッシャーでしたけど」と、素直にプレッシャーがあったことを認めた。その上で「共演者、監督、スタッフの導きのもと、新たな『八つ墓村』ができたと確信しております」と力強く口にして、胸を張った。

プレミアナイトでも上映は行われず、物語の詳細も明らかにされていないので詳細は伏せるが、記者はイベント前に映画本編を試写で見ており、壇上で口にした松也の言葉に納得した。普段と捜査時にギャップがある…もっと言えば、これまで名優と言われた俳優が演じてきた金田一より、柔らかで親しみやすい金田一が、スクリーンの中にいたからだ。時代を令和に置き換えたことにも、そこまでの違和感を覚えなかった。

試写では、完全新作とはいえ、細部は変えたにしても大枠は変えてはいけない、作品の根幹となる存在も痛感させられた。77年版で山崎努(89)が演じた大量殺人鬼・田治見要蔵と、演じた滝藤賢一(49)である。プレミアナイトの冒頭でも、要蔵に扮(ふん)したアクターが会場内を走った後、スクリーンの中で演じた滝藤が登場する演出があった。要蔵と息子・久弥の2役を演じた滝藤は、プレミアナイトで「何か今日、見ていただけないのはとても残念。9月に見ていただけるのが楽しみ」と語っている。その言葉、記者も同感だ。作品の、もろもろを公開できる段階になったら、要蔵を演じた滝藤を紹介しようともくろんでいる。「八つ墓村」とホラーのファンには、その機会を心待ちにして欲しい。【村上幸将】