落語家立川かしめ(37)が、通算6度目となる独演会「かしめのピン・夏」を23日(午後7時開演)に、東京・渋谷区文化総合センター大和田・伝承ホールで行う。20日までに日刊スポーツのインタビューに応じ、来場を呼び掛けた。
かしめ 落語の醍醐味(だいごみ)は想像してもらうこと。省略の美学だと思うんです。『面白い』だけなら、漫才やコントかもしれないですが、感動や怪しさ、不気味さ、何か心に残るものを残したい。初めての方も大歓迎です。
立川流家元の故立川談志さん出演のフジテレビ系落語番組「落語のピン」、その弟子で大師匠にあたる志らくも担ってきた「ピン」の看板だけに、予定する4席の稽古も熱がこもった。
かしめ 最低限の前座さんはいらっしゃいますが、ゲストも呼ばず、自分1人でやる会としてやっています。家元が「落語のピン」、大師匠が「志らくのピン」とやられていて、師匠(こしら)に許可をいただいて「かしめのピン」というタイトルで、1人でという、覚悟を持った会になっています。もともと新たなネタ、自分自身が1番ホッとだと思っているネタをやるといったことがコンセプトの会。今年は季節をテーマにしているので、夏らしいお話、怪談だったり、舞台が夏のお話だったりと、お届けしたいと思っています。
「面白い」だけではなく、どこか不気味さや不思議さをプラスした「怪作(かいさく)落語」、さらには「怪談落語」を打ち出し、日々、精進している。
かしめ 僕の怪談落語には異形が出てくるんですけど、メイクや衣装を着るということではなく、しぐさだけで皆さんが想像して「怖い」と思ってもらえるのは、他にないと思います。実際に最近、やったのは、頭が人間で、体がヒグラシのバケモノが出てくるんですけど、それをCGや特殊メイクで作ると、どこか「そんなバカな」と、なると思うんです。ただ、想像だと、それほど違和感なく、皆さんに「気持ち悪い」と思ってもらえるのは落語ならでは。事細かには説明しない。講談とかだと、細かく説明するのですが、本当に端的にしか説明しない。情報が少ないから、皆さんが勝手に想像してくれる。その、お客さんと一緒につくり上げていく感じが、すごくいいなと思います。ある種、お客さんにすごく負担をかけているなと(笑い)。
観客に想像してもらう上で、言葉だけではない部分も重要視している。
かしめ もちろん言葉もすごく大事なんですけど、人間って、言葉よりも目線や体のこわばり、表情…。まさに「目は口ほどに(物を言う)」と言いますが、意外と文字になっていないところの表現で、伝わることが多いかなと思っています。面白いことって、言葉の方がつくり上げやすいですけど、「奇妙」といったことは、沈黙の中に収まっていることが多いと僕は思っています。その沈黙を生かすための会話になってくると。どこまで言ったらいいのか、言わない方がいいのか。わざと気付かせないことも大事だと思っています。
言葉だけではなく、体全てを使って観客に想像させることが、特に自身が得意とする「怪作落語」「怪談落語」には必要な要素ととらえている。そんなかしめが参考にしているのは、意外なジャンルだった。
かしめ 演出、展開、設定で、すごく参考にさせていただいているのが、読み切り漫画ですね。数十ページ、短ければ10ページぐらいの中で、起承転結をギュッと入れて、驚きを伝える。特に絵で見せないといけないので、すごく難しいことをやられているなと。何を伝えたいか、ということが伝わりやすいし、落語の尺に近いんじゃないかなと思います。
毎週平均7、8作品の読み切り漫画を見て、研究を重ねているという。
かしめ 読み切り漫画は、読者の方に全部伝えきらないといけないですし、ここで完結させるという意思を持ってやられていることが多いので。「ここでネタばらしするんだ」という、ごまかしのきかない見せ方とか。文字や落語は、ごまかしがききますが、漫画で、その場にいるように見せかけて、いないというのはバレてしまうので、より複雑なテクニックが用いられていますね。ストーリー自体、ラブコメと見せかけて実はホラーとか、ミスリードの仕方とかも、お客さんの驚かせ方として参考になりますね。あと、分業の方もいますけど、1人でやっている漫画家さんも多いという印象があって、構成、演出、出るのも自分という落語家に近いものがあると思っています。
その分、責任も1人で背負うことになり、重圧は計り知れない。
かしめ スベった時は最悪ですよ(笑い)。逆に自分自身が考えたものが、うまくハマる瞬間はすごくうれしいですし、何か起きた時に対応しやすいのが、ピンの強みだと思っています。師匠からの教えで「何かトラブルが起きた時は絶対に何かやれ」と言われているので、例えば(客席で)携帯電話が鳴ったら鳴ったで、対応しようと思っています。「今後、鳴らさないようにね」というメッセージも込めますけど、せっかく起きたら楽しみたいし(携帯電話を鳴らした)その方が悪者にならないように、エンタメにしたいなっていう思いがあります。
今回は約350席の伝承ホールで開催する。
かしめ 伝承ホールを常時満席にできるようになりたいというのが、今の目標ですね。満席になる時もあれば、半分ぐらいしか入らない時もあります。それを繰り返して、自分自身の技術を身に着けて、真打ちに向けて常に埋められるようになりたいですね。
早大を卒業、大手広告代理店ADKで4年間勤務後、15年6月に志らく門下のこしらに弟子入りした。こしら発案の命名権オークションで、アイドル仮面女子が落札し、入門直後から1年間「立川仮面女子」を名乗った異色の経歴を持つ。
かしめ 最初の1年間だけ「仮面女子」として活動させていただきました。その後は、期限が切れたのですが「かめんじょし」で「かめ」と呼ばれていたので「かめ」を残して(師匠の)「こしら」の「し」を間にいただいて「かしめ」という名前になりました。でも、後からこうして話ができますし「あの時の!」みたいになるので、ありがたい部分もありますが、当時は「仮面女子でございます」と言って出ていくとザワザワしてましたね(笑い)。立川流の前座は厳しくて「まくら」と言われるフリートークが基本的には禁止。ですが、僕の名前の説明に関しては問題ない、その話だけはしていいという許可をいただいていました。というより、しないと変な感じになるので。何で「仮面女子」なのかは言っていいと言われていました。
独演会も間近に迫る中、心身のコンディションづくりにも余念がない。
かしめ 緊張は、当日に一気に来るタイプの人間ですね。当日のお昼ぐらいから、本番直前までが1番緊張して、始まったらもう、やり切るだけなので楽しいんですけど、やる前までは「忘れないかな」とか。直前になると変なところを忘れることがあるので。「昨日までできていたのに」という時は、めちゃくちゃ焦りますね。それまでできているから警戒していないんでしょうね。睡眠は、ちゃんと寝ないとまずいですし、睡眠不足だと分かりやすくかむんですよね。寝ていないと、どうしても舌の動きが悪くなる、明らかに質が落ちるので。緊張していようが、いまいが、とにかく横になります。寝ないと記憶も定着しないですし、直前はちゃんと寝るようにしています。
記憶を定着させるために、ネタを忘れないために続けていることがある。
かしめ 記憶って短期と長期があるといわれています。一門の立川談笑師匠がおっしゃっている記憶法が、1回覚えたものを、スパンを空けて反復するというものです。ある話を覚えたら2日後にもう1回やってみる。次は4日後にどうか。そこから8日後、16日後、1カ月後、2カ月後、4カ月後と増やしていくんですけど、それで1年間空けて、できるようになっていれば、かなり引き出しから出しやすい状態といいますか。かなり刻まれた状態になるので、それは訓練方法としてやります。久々にやって思い出す、ということを繰り返す。役者さんと違って、使い捨ての記憶ではないので、1回覚えたら、また別のところでもできるんですね。短期記憶とは違うもので「よくそんなに覚えられますね」と言われますが、一生使うものなので。逆に役者さんが、よく覚えられるなと。もう2度と使わないセリフを、よくそんなに覚えられるなと。こちらは1度覚えたら無限に使えて覚えがいがあるので、役者さんはすごいなと思いますね。
広告代理店で営業をしていたころから付き合いが続いているケースも多く「今も見に来てくださる方も多いですね」と、サラリーマン生活が生きていると実感を込めて話す。それもこれも、口調は朗らかで明るい性格が、自然と人を引きつけている格好。「いろんな方に見ていただけたら」。老若男女を問わず、自身の創作落語を楽しんでもらうことを心から願っている。【高田文太】
◆立川かしめ(たてかわ・かしめ)1989年(平元)3月30日、名古屋市生まれ。2011年3月、早大教育学部理学科地球科学専修卒業。同年4月、アサツーディ・ケイ(ADK)入社。15年6月、脱サラし、立川こしらに入門。故立川談志さんにとって初の曽孫弟子となる。入門直後の命名権オークションで、アイドルグループ仮面女子が25万1000円で落札したことで、1年間、「立川仮面女子」として活動。16年10月、立川かしめに改名。20年4月、二つ目に昇進。「伝承ホール」では年2回のペースで独演会開催。趣味は映画観賞、卓球、ボードゲーム、Amazon回覧など。178センチ、70キロ。