7月28日に発生した令和8年熊本地震から1カ月後となる30日、東京・テアトル新宿で「チャリティ上映会」が開催された。
上映会は、行定勲監督(58)が、16年4月の熊本地震で被災した故郷の復興のためにディレクターを務め、翌17年3月に熊本市と菊池市でスタートした、くまもと復興映画祭が主催。同監督が15年10月に、熊本の美しさを伝える意図で故郷を舞台に初めて撮影した中編映画「うつくしいひと」を上映。同作と、続編の「うつくしいひと サバ?」に主演した、同じく熊本出身の高良健吾(38)も参加した。同監督は上映会後の囲み取材で、映画の力で復興を支援しようという思いから、今後、タイミングを見て「うつくしいひと」の、さらなる続編を製作する可能性を示唆した。
「うつくしいひと」は、高良が演じた探偵が、謎の黒服男から母、娘を守る物語。16年4月14日に熊本地震が発生したことを受けて、同15日深夜に発生した2度目の地震の際、熊本市内にいた行定監督が、全国でチャリティー上映会を開催した。地震前の熊本の美しい風景が映された映画は、被災した熊本県民の支えにもなった。「-サバ?」は、熊本地震で甚大な被害を受けた益城町で16年10月に撮影。主人公の探偵が人捜しに加担する中で、被災地の人の心情、自分の感情に触れる物語。
行定監督は上映後のトークで、今回の地震で甚大な被害を受けた八代市と宇城市について触れた中で、幼少期の八代市での思い出について言及。「夜に有明海の奥に蜃気楼(しんきろう)が立つ。いさり火の光を受け、幻想的に浮かぶ。子どもの時、おやじに連れて行かれて強烈な、映画的な思い出。なんで、海の水平線が明るく、ユラユラしてるんだと…」と、八代の海で見た蜃気楼(しんきろう)が、自身の映画体験の1つにあると語った。その上で「『うつくしいひと』シリーズは、八代では撮っていない。本当に復活した八代と、向き合わなければいけないなと…そんなことを思っています」と語った。
囲み取材では、その発言を受けて行定監督に「『うつくしいひと』の続々編を作りたいという思いはあるか?」、高良には「再び、出演のオファーを受けたら、やろうという気持ちはあるか?」と質問が出た。同監督は「さっき(舞台の)裏で言っていましたよ、次の、と…。海の蜃気楼(しんきろう)は幻想的なもので、画を撮ると、それはそれで話は膨らむ」と続々編製作の可能性を認めた。その上で「僕より、高良君の心の中で熊本愛があるので。まだまだ、熊本で撮らなきゃいけないものがあるという気持ちがあります」と高良に話を振った。
高良は「今回は実現しなかったんですけど、復興映画祭が10年目になるということで、節目で『うつくしいひと』を撮ろうか、と。何となく、こういうことをしようか、というのはあった」と、既に続編製作の動きがあったことを明かした。トークの中で行定監督が、くまもと復興映画祭に区切りを付ける考えもあったことも口にしており、高良は「地元の人たちに元気を出し、楽しんで欲しかったので、ちょっと短編でも、というのはあった」と続けた。
その中で、想像もしなかった令和8年熊本地震が発生してしまった。高良は「今回、地震が起きて、やっている場合じゃない。じゃ、次にということなんて言えない。今回は、なしで、となった」と、続々編の撮影は1度、なしになったと明かした。「仕方ない、それはそうだと思う」と口にした上で「自分たちは(映画の)題材を何か探しているわけではないし、題材にしたいというわけでないし、ネタでもない」と強調。「みんな熊本が好きで、美しい景色を残したい、楽しんで欲しいという気持ちで毎回、やっています。この後、もし望まれる、喜んでくれるのであれば現地の人たちと話して、何かやりたいなと思う」と語った。
高良は「前回(10年前の熊本地震発生時)は、僕も行定さんも、すぐ行けるタイミングで動けたし、時間もあった。いても立ってもいられない気持ちで、現地で行定さんと皆で動けた感じ。今回は時間もタイミングも、自分も仕事もあり、どうしても」と現状を説明。その上で、くまもと復興映画祭の力を借りて「1、2年後、できることを考えていきたい」とも語った。その、できることは「うつくしいひと」の続々編なり、映画製作なのか? と聞かれると「それは、また話が違う。そういうことじゃない、自分たちができることをしたい」と語った。行定監督は、今年の同映画祭の開催を明らかにしている。【村上幸将】