25年9月2日に90歳で亡くなった吉行和子さんが、同2月に撮影に参加した映画「あなたの息子ひき出します!」(深川栄洋監督、10月2日公開)完成披露上映会と舞台あいさつが16日、東京・ユーロライブで行われた。同作は、吉行さんが最後に演技をした作品で、大森南朋(54)演じるひきこもりの息子・三浦雅彦を持つ数子と、同じ読みの名前の役どころを演じた。映画のエンドロールには、吉行さんにささげるメッセージも付記された。
同作は、深川栄洋監督(50)の妻で、今作のプロデューサーも務めた女優の宮澤美保(52)が主演し、都会から離れた平穏な街に幼い息子・颯太(小野光南翔)と2人で暮らす小林典子を演じた。典子は、社会から孤立している、ひきこもりを支援する活動を展開。つながりを必要としているさまざまな葛藤を抱えた人々と一心に向き合う典子の元に、他に行くあての無い人や相談が集まってくる物語。宮澤は「とても小さな作品ですが、本当にたくさんの皆さんのお力添えをいただいて、この場に立ちました」と、感無量の面持ちで瞳を潤ませた。
深川監督は「この映画は自費で作った。何度も、この映画はなくなりかけました。」と明かした。「クラウドファンディングも、する予定はなかった。撮影1カ月前に、出資者が、この映画は無理だということで、降りてしまった。こういう社会の問題を扱った映画を作るのはハードルが高い。スタッフミーティングの日に、出資者もプロデューサーも降りてしまった」と、苦しかった製作を振り返った。その上で「宮澤さんが、自分たちで作っていこうと決めてくれました。家を抵当に入れて、借金して映画を作った。何で、こんな苦しい映画を作るんだと言われるんですけど、苦しい映画こそ皆に見てもらいたいと思って作りました」と訴えた。
製作費、配給、宣伝費も含め、3500万円の予算がかかるという。深川監督は「今日の完成披露も、プロフェッショナルがいない。宣伝もいない。やりかたが分からず、募集したのも3日間で、ボランティアが集まってくれたのは奇跡。孤独が進んでいる社会ですけど、人とつながるしか、生きる術はない」と感謝した。
この日は、矢崎修吾役の、のせりん(23)と、若林大殻を演じたシンガー・ソングライターの石崎ひゅーい(42)も登壇。石崎は、撮影中に作り上げた映画の主題歌「手品」を、この日、生演奏&歌唱した。
◆「あなたの息子ひき出します!」 ある時、いつものように依頼を受けた典子が任されたのは、長い間ひきこもったままの三浦雅彦(大森南朋)だった。初めは一切の関係を拒んでいた雅彦も、典子の地道な働きかけにより徐々に周囲と言葉を交わし始める。このまま順調に外の世界へとつなげることができるはずだった。しかし、彼には決して引き出したくない過去があった。