「真之介は…いいんです!」満島真之介の“突然のMC”映画舞台あいさつで見せた場を回す力

映画「沖晴くんの涙を殺して」完成披露試写会に出席した満島真之介

<ニッカンスポーツ・コム/芸能番記者コラム>

先日、映画「沖晴くんの涙を殺して」(10月2日公開、矢崎仁司監督)完成披露舞台あいさつを取材した。

同作は額賀澪氏による同名長編小説が原作。広瀬アリス演じる末期の乳がんを患い余命1年を宣告された音楽教師・踊場京香と、木戸大聖演じる笑顔を絶やさない不思議な高校生・志津川沖晴との出会いから始まる物語。津波で家族を亡くしたことをきっかけに、喜び以外の情緒「嫌悪・怒り・哀しみ・恐れ」を失った沖晴との交流を通して、余命わずかな京香と沖晴の感情を取り戻す不思議な日常が描かれる。死と向き合う2人を描く作品だけに、映画には静かで切ない空気が流れている。

一方、舞台あいさつでひときわ目を引いたのは、満島真之介(37)だった。ステージに登壇し「皆さん、平日の昼に何しているんですか!」と、早々に客席に呼びかけ、「木戸君とアリスちゃんのプラカードがいっぱいで、みんなに届いております。真之介は…いいんです」と、自身への応援ボードが少ないことを嘆き、会場の笑いを誘った。

そして「監督がまだ話していないので」と司会者が促す前に、監督に話題を振り、広瀬の言葉を拾いながら、いつの間にか場を回していた。木戸がトークの中で肌を褒められた際にも、「そうやって褒めればいいんだな。ピカピカだよね。素敵です」とすかさず乗っかり、会場を沸かせた。

満島は広瀬演じる京香の元フィアンセ・赤坂冬馬を演じた。余命宣告を受けた京香から別れを告げられる役どころ。劇中の重い役柄とのギャップもあり、舞台上で見せる満島の明るさが印象に残った。

一方で、同作が撮影された広島には、満島自身も特別な思い入れがあったという。

「若い時から旅をよくしていまして、広島のあの辺って自分の中でも思い出深い場所だったんですよ。東京に出てきて初めて友だちになった人がいて、その人の出身地がそこだったんですよ。呉から江田島は、18歳ぐらいから何度もそいつと一緒に行っていて、自転車に乗ったり、免許取り立てでそこで運転したり、自分の中でも思い出の場所だったんですよ。そこで映画の撮影があるという。しかも役柄がフィアンセで、彼女が余命1年だっていうのも、いろんな思いとともにその地域で撮影していて、冬馬を演じているんだけど、自分の人生ももう一度振り返るような時間になって。毎朝、撮影ないのに海ずっと眺めていたもん。美しいと思って。ランニングした後で超汗かいているけどね」

ストーリーにちなみ、木戸が「一生のうちにやりたいこと」としてスカイダイビングを挙げると、「やる? すぐ。黄色い車で行っちゃおうよ」と誘うなど、最後までサービス精神は健在。しかし、作品については、「こんな広瀬アリスがいるんだ、こんな木戸大聖がいるんだ、に尽きます」と真っすぐに語った。

映画は死や悲しみを扱いながらも、悲しみだけを描く作品ではない。広瀬も「決して悲しい話ではありません。どちらかというと前向きな話」と伝えていた。

重いテーマの作品だからこそ、笑って、ふざけて、場を明るくする満島の存在が、作品の持つ前向きさを体現しているようにも見えた。映画の余韻とはまた違う形で、満島の“突然MC”ぶりが記憶に残る舞台あいさつだった。【加藤理沙】