<ニッカンスポーツ・コム/芸能番記者コラム>
3、40分ほどの舞台あいさつにあれほど全力を注ぐ人を初めて見た。先日、都内の映画館で行われたドラマ「おいしい給食 season4」の上映トークイベントに入った。給食マニアの教師・甘利田幸男役の市原隼人(39)は冒頭からキレッキレの全力ダンスで登場。自身の熱気でその後何度拭いても、メガネがくもり続けていた。
生徒役の橋本偉成には「殻を破ろうと一生懸命、奮闘する姿に私が学ばせていただいた」とリスペクト。「思春期のかけがえのない時期をともにいさせていただき、これ以上ない感謝をしています」と丁寧に向き合った。
撮影は「感情をむき出しにして」臨んだという。シリーズ8年目を迎えた制作陣を「家族のような仲間」と言いながら「でもなれ合いは好きじゃありません」と、今回初めて綾部真弥監督に強く意見した。
「その時に綾部さんが、撮影現場で起こることは全ておれの責任とおっしゃってくださった。人生でそんなことをおっしゃった監督は綾部さんが初めてだったんです。その言葉を聞いて涙が止まらなくなってしまって」。思い出して言葉を詰まらせる。「こんなに責任感をもって引っ張ってくださる監督と一緒に、ああ、7年やってこられたんだ。本当に幸せ者だな」。「監督がいるから自分は奮闘できる」と言われた監督まで目が潤んでいた。
男同士で衝突し、相手の熱い言葉に涙し、絆がより強固になる。少年漫画の主人公でよく見るやつだ。
劇場版の告知後には、さらに深くシリーズへの愛を語った。「誰かが悲しんだり、苦しんだりしているニュースを見るたびに、おこがましいかもしれませんが、この作品で希望を提示できないかと、本気で思っております」。「誰かを笑いものにすることは好きではありません。人を笑うことも好きではありません。ですが、人生で初めて、笑われ者になりたいと思ったんです」。滑稽でも“好き”に素直な甘利田の姿を「皆さんの活力にしていただきたい」という。だから全力で笑われにいくのだ。
全力すぎて、クランクイン2日目にはなぜか手の小指の骨にヒビが入っていた。「力を惜しみたくないんです。この作品は我々の夢なので」。キャスト、スタッフが“全員野球”でつくりあげるさまに「無償の愛を感じた」と力説した。
さらには「そんな愛してやまない作品の、お客さまに会えることがすごくうれしい」と退場時に観客とハイタッチ。時間も押していたし、さらっと終わらせる予定が、時折ハグもまじえながらすべての通路を駆け巡った。はける前には再び全力ダンスの大サービス。さっきまで涙ぐみながらトークしていたとは思えない、ユニークな動きで盛り上げた。
劇場を出た後、気功をうたれたような気持ちになった。全身からエネルギーを放出し続けている人。会ったことがある中では松岡修造さんとツートップだと思う。「熱血」と言えばそれまでだけれど、役以上に本人が真っすぐでぶれない人すぎる。
そもそも普通の40歳は最初のダンスすら体がきつい。省エネで生きたいタイプなので直視できないまぶしさを感じ、全力って美しいなと圧倒されて帰途に就いた。【鎌田良美】