<ニッカンスポーツ・コム/芸能番記者コラム>
記者という職業の苦悩の1つにヒントを与えてもらったような感覚になる取材があった。
このほど、元乃木坂46の若月佑美(32)が東京・文京区「encounter gallery」で開く15周年記念作品展「FIRST EGOISM」の開催前会見に足を運んだ。
9月18日に刊行した同名の作品集に収められた撮り下ろし写真や、作品集に収録されていないカット、新規制作作品だけでなく、これまで発表してきた作品群も展示。作品の販売も行うという、若月の芸術の歩みそのものを詰め込んだ展示となった。
恥ずかしながら、記者には絵画に関する造詣(ぞうけい)は全くないと言っていい。しかし、ただなんとなく、作風や表現が異なる絵画、中には自らも映った写真作品もずらりと並んでいるその景色を前にして若月の持つ「アンテナ」のカバー範囲の広さを感じた。そのため、作品の着想点がどこにあるのか、何を見て思いつくのか、大切にしている視点を聞いてみることにした。
返ってきた答えは「言葉から絵を作っていくことが多い」というものだった。分かったような顔をしてうなずいてみたが、記者の脳内には「?」の一文字。「じゃあその言葉は何だっていうと、歩いていてふと疑問に思ったことや、感じたことをメモに書いておいて、それを作品として表現していくことが多いですね」と説明が加わって、初めて少し理解できた。
その場で完全に理解できるとは到底思えなかったが、若月の感性に一瞬にして興味がわき、その感覚を少しでも知りたいと感じた記者は最近メモした言葉はあるか聞いた。すると、しばらく悩んでから「本当は嫌なことでも、誰といるか、どこにいるかという状況によってはうれしいことになる」と返ってきた。「例えば、赤信号。普通だったら青がラッキーと思うけど、友達と帰っていて、その時間が楽しすぎて長く続けって思っていた時の赤信号はうれしい。赤信号でもうれしいって面白いなと思って、そういうことを表現してもいいなと思いました」と説明してくれた。
「もうすごくバラバラです。友達と会話している時の疑問から生まれたものもありますし、ドラマを見ていて思ったこともありますし、街を歩いていてただ信号を見て思ったこともありますし、そういういろんな日常から切り取って作品にしていくことが多いです」とも話してくれた。
日常のささいな部分にヒントがある。これだけははっきりと理解できた。アンテナの範囲が広い、というより、本数が非常に多いと表現した方が良いだろう。記者をしていて、表現が偏りがちなことが最近の悩みだった。そんな中で、若月の感覚こそいまだに上辺しか分かっていないだろうが、他の記者が書いた記事を読んで知識としてたくわえる以外にも方法がありそうなことはこの会見で十分に分かった。
どこにどんなヒントがあるか分からない。上を、横を、遠くを見る意識を持って何かしら感じ取っていこうと思う、そんな取材となった。【寺本吏輝】