社会学者の古市憲寿氏が20日までにXを更新。三谷幸喜氏作・演出の舞台「アメリカン・ドリーム」を観劇したことなどを報告した。
1940年代に米国で吹き荒れ、多くの政治家や学者、芸術家らが告発された、いわゆる“赤狩り”を描いた作品。古市氏は「舞台『アメリカン・ドリーム』を観てきた。赤狩りが吹き荒れていたハリウッドを舞台にした会話劇。三谷さんは、日本で一番、会議を描くのがうまい脚本家だと思う。赤狩りという、今となっては『そんなことありましたっけ』というテーマなのに、最後まで緊張感とユーモアの絶えない2時間だった」と書き出した。
そして「自由の国で、自由に考えたことが取り調べられた時代。ざっと見た限り、SNSでは『現代に通じる』という感想が多かったように思う。そう、確かにこの作品は現代に通じる。自由の名のもとに、魔女狩りがごとく、たやすく人々がキャンセルされる。でも僕がずっと考えていたのは、『現代に通じる』という感想をどの立場で言うか、だった。『アメリカン・ドリーム』を観ている最中、我々は安全な客席にいる。SNSで『これって今のSNS社会と一緒だよね』とつぶやく時、その人もきっと客席にいる。でも客席に座っていたはずの人が、急に当事者になってしまうことがある。舞台に登らされることがある。その時に果たして何が言えて、何が言えないのか」と続けた。
また、古市氏は「新型コロナの流行時、普段は自由の重要性を語っていた人が憲法を無視した私権制限にたやすく賛成していた。中居くん騒動の時は、みんな何の証拠もないはずなのに、たやすく彼を断罪していた。そして当時、大騒ぎしていた人の多くは、『そんなことありましたっけ』という顔をして日常を送っている。今でも思い出すんだよね。あとから調べて完全に嘘だとわかったことを、当時、迫真の顔をして語っていた人の顔を。みんな、流れには乗っておきたいのだろう。最近ではオープンレター騒動と、その署名者の一人による明確な差別発言なんてのもあった。まあ、署名者たちは『そんなことありましたっけ』とでも思ってるのだろうか」と、25年1月に芸能界を引退した、自身も長年共演した中居正広氏をめぐる騒動にも言及。
その上で「この作品では、きちんとそれぞれの事情が描かれている。密告者にも事情がある。そうじゃないとやっていけない理由がある。そして密告者は常に密告者と生きているわけではない。発言や振る舞いの繰り返しが本性に見えてしまうに過ぎない。その意味で『アメリカン・ドリーム』のラストは印象的だった。ある時代に正しいとされる振る舞いをしていた人が、あとの時代からどう評価されるかわからない。しかも人間の記憶力を超えて全てがデジタル・タトゥーとして残り得る時代だ」と述べ、「あらゆる人の、あらゆる発言は、まだ開かれていない聴聞会の証拠なのだということを忘れずにいたいと思った。あと、当たり前なんだけど、すごい役者さんって、きちんと人生と時代を背負えるんだね。すごかった!」としめくくった。
この投稿に対し「古市さん、いつも本当に本当にありがとうございます このまま『なかったこと』には絶対しないで欲しいです」「自由の名のもとに魔女狩りをする人たち。自分だけが正しいと思いこみ、人を陥れても平気。今の世の中にも沢山いそうで怖いです」「あの時の世間のやりかたをおかしいと言い続けて頂き、本当にありがとうございます!」などとさまざまな声が寄せられている。