佐野史郎「クリムゾンやピンク・フロイドが好きだった」「小泉八雲 朗読のしらべ」/連載2

小泉八雲朗読の調べ「思ひ出の記~セツが語ったヘルンの怪談~」に出演する佐野史郎はまっすぐな目でカメラを見つめる(撮影・増田悦実)

俳優佐野史郎(71)が、ロックバンドBOW WOW/VOW WOWのギタリスト山本恭司(70)とのユニットで2007年(平19)から続ける朗読公演「小泉八雲朗読のしらべ『思ひ出の記~セツが語ったヘルンの怪談~』」が11月16日に東京・有楽町のアイマショウで行われる。島根・松江出身の佐野と山本が、松江を愛した小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)と妻セツの物語を中心に、怪談と音楽を融合させたステージを届ける。佐野に聞いた。3回連載の2回目。【小谷野俊哉】

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今回の公演では、八雲の妻セツの存在に光を当てる。八雲の怪談や著作が広く知られている一方、セツがどのように夫を支え、物語を語り聞かせたのかについて知られていない面があった。25年度下期のNHK連続テレビ小説「ばけばけ」で、初めてセツのことを知った人も多い。

「セツさんがいなかったら、小泉八雲という人もいなかった。そういう意味では、セツさんの存在は非常に大きいですよね。今回はセツさんの文章を軸にして、ヘルン(八雲)さんに怪談を語り聞かせていた様子をちりばめながら構成しています。夫婦の関係について、ドラマで描かれたことで、少し自由になったんじゃないでしょうか。2人の愛情が、今回の『思ひ出の記』を見ても、よく分かると思います」

今回の公演では、八雲の代表的な怪談の1つ「耳なし芳一」も取り上げる。長大な物語で、演じる側にも集中力が求められる。

「『耳なし芳一』は、それだけで45分ぐらいかかるんです。今回は1時間近くになるかもしれない。なかなか集中力がいりますね」

20年にわたり相棒となるのは、レジェンドギタリストの山本恭司。俳優、ギタリストとして、別々に世に出た2人だが、松江南高校の同級生だ。

「高校1年生の頃からの付き合いです。山本はギターを始めて間もない頃で、僕もギターを始めて1年ぐらいでした。僕がギターを教えたこともあります(笑い)。バンドを組んでいたわけではないけれど、文化祭で一緒に演奏したり、セッションをしたりすることはしょっちゅうありました。高校卒業後に彼はハードロックを演奏し、僕はライブハウスで舞台に立っていました。でも、交流が途絶えたことはない。ずっと互いに刺激を受けてきた」

そんな関係の2人だからこそ生まれ、20年間続いてきた舞台だ。

「不思議な縁ですよね。同じ松江で育って、同じ高校に通い、音楽を通じてつながっていた。それが今も続いている。高校時代から、僕が即興でしゃべって、山本が音楽を付けるような遊びをやっていたんです。どんな音でも出せることは分かっていたから、この企画を松江市からいただいた時も、1人で語るより、生の演奏があった方がいいと思いました。生の演奏で2人が掛け合いながらやる。講談や語り物など、日本の伝統的な芸能には、語りと音楽が一体になったものがありますよね。そうした原点を少し意識しました」

構成、台本は佐野が担当。2人ともプログレッシブ・ロックを好んできたことも、舞台の音楽性に影響している。

「僕が構成台本を書いて、組曲のように作っています。2人ともキング・クリムゾンやピンク・フロイドが好きだった。そういう音楽の感覚も、この舞台に生きていると思います。語りに合わせて美しい音を入れたり、あえて音を抜いたりする。決めてはいるけれど、本番になって新しい音が入ってくることもある。そこはライブですね。今でもバンドをやっているつもりなんです」

朗読とギター演奏が一体となる公演。観客を前にして、体力と集中力が要求される。

「1時間半、ずっと出ずっぱりですからね。伝え続けなければいけない。元気じゃないとできない仕事だと思います。生の舞台には、他にはない、かけがえのないものがあります。観客との共犯関係というか、我々にしか分からない時間があるんです」

(続く)

 

◆佐野史郎(さの・しろう)1955年(昭30)3月4日、島根県松江市出身。山梨で生まれ、東京を経て、6歳の時に松江へ。74年、シェークスピア・シアター創設に参加。80年、状況劇場へ。86年、林海象監督の「夢見るように眠りたい」で映画初出演で主演。92年、TBS「ずっとあなたが好きだった」。93年にTBS「誰にも言えない」、NHKのドキュメント「ウルトラマンを作った男」、映画「ゲンセンカン主人」主演。07年から「小泉八雲・朗読のしらべ」。18年、フジテレビ系「限界団地」で連続ドラマ初主演。175センチ。血液型B。