俳優人生70周年の山﨑努(89)が2日、都内で開催中の東京国際映画祭Nippon Cinema Now部門で特別上映された「山﨑リバーサイド-俳優の肩ごしに-」(犬童一心監督、27年公開)質疑応答に登壇した。壇上に“門下生”とも言うべき存在の渡辺謙(67)が、花束を持って祝福に駆けつけた。
渡辺は、1985年(昭60)に山﨑が主演し、初演の舞台「ピサロ」で、インカの王アタウアルパを演じたことが評価され、20年には山﨑が演じたピサロを演じた。「実は、ちょうど、この映画を撮る前だったと思うんだけど、たまたま山さんのうちにお伺いする機会があって『今度、生身の自分をさらけ出す、取材を受けようと思う』って話を聞いたんだよね」と、映画に至る取材の話を聞いていたと明かした。
渡辺は、自身もインタビューを受ける形で映画に出演している。山﨑が25年に食道がんで闘病したことを踏まえ「役ではない…特に役に対して深掘りして、深掘りしてやるタイプの山さんが、自分をさらけだすっていうのは、ものすごく体力、根気がいるし。もちろん病み上がりだったり、年齢のこともあったし、山さんの体が心配で。しんどいことやって、体をこわしたら心配で、って話はしました」と続けた。
その上で「でも、その時も、覚悟を持って身をさらけ出すんだって、思っていたんですよね? 映画を拝見して、監督が上手にすくい上げてくれたシーンの積み重ねだと思うんですけど、そこには自分がどうやって生きてきたのか、俳優という仕事をしてきたかが、ものすごく、宝石のようにちりばめられた映画」と評した。そして「僕も、若い俳優ではないんですけど、一応、山さんの門下生としては、見てきたこと、聞いてきたこと、今まで山さんがやってきたこと、一緒にやららせてもらったことが呼び起こされ…近い関係ではあるんですけど、かなり感動させてもらいました」と振り返った。
「山﨑リバーサイド-俳優の肩ごしに-」は、山﨑にとって、初のドキュメンタリー。老いと向き合い、がんと闘病する中でも「俳優」を追求する姿に密着した。映画「天国と地獄」(63年)で黒澤明監督に発見された才能を、自らの力でどう開花させていったのか? 本人のロングインタビューに加え、山﨑から影響を受けた柄本明(77)香川照之(60)鶴見辰吾(61)山田洋次監督(95)や黒澤映画を支えた野上照代氏(99)のインタビューを交え、描いた。
劇中では、山﨑がリハビリの一環として、かつて愛好した野球のキャッチボール150球、バットの素振りを25本行った後、38度の熱を出してダウンしてしまう姿も描かれる。渡辺は「キャッチボールして、ヘロヘロになって熱を出してね。ああいうことが、あるんですよ。多分、山さんが、サービス精神があるので、野球を久々にやったら楽しくて、やっちゃうんだよね。それ以上の価値が、この映像には残って、本当に良かった」と言い、笑みを浮かべた。
山﨑は「無理してね、震えが止まらないんだよ。前の日、オーバーワークで、なぜ、震えが止まらないか、分からないんだよ。本当に不思議だった」と当時を振り返った。その上で「何も後悔することはありません、この映画ではね。本当に面白かった。犬童さんとやって、やりやすくて、やっていて気持ち良かった」と満面の笑みを浮かべた。