<ニッカンスポーツ・コム/芸能番記者コラム>
先日、都内で開催された映画「さとこはいつも」(沖田修一監督)のティーチイン付き上映舞台あいさつに登壇した、姫野花春(かしゅん=16)と沖田監督を取材した。
姫野は先日、第31回釜山国際映画祭で、コンペティション部門を通じた史上最年少受賞という快挙を成し遂げたばかり。沖田監督から大きな花束を贈呈され、「スピーチで話したこと、今日沖田さんに会えたのがとにかくうれしい」と笑顔を見せた。
釜山での思い出について、映画祭の熱気や現地の反応、映画祭で好きな韓国人女優を偶然見かけたというエピソードも飛び出した。声をかけることはできなかったそうだが、「私はもうぴょんぴょんぴょんぴょん跳ねながら、『いる!いる!』と思って」と振り返る。
さらに観客から「7回見ました」と言われ、「うれしい!そんなに?なんで?」と目を真ん丸にして驚く。好きな食べ物を尋ねられると、迷わず「イモです」という。さつまいも好きだという姫野に、沖田監督は受賞祝いとして大量のさつまいもをプレゼント。「スーパーで全種類のイモを買いました。品種に厳しいって聞いて」と監督が経緯を明かすと、姫野はまたうれしそうに笑った。
とにかく明るいティーチインだった。姫野は目の前にある出来事を一つ一つ、面白がる。映画祭ででの受賞も、好きな女優を見つけたことも、さつまいもを受け取ったことも。それぞれの喜びを、真っすぐに受け取っている。試写を見られなかったこともあり、後日同作を鑑賞した。
同作は、年齢も境遇も異なる3人の女性が、自分の人生を物語として書き始めるところから展開する。初恋に浮かれる、姫野演じる15歳の聡子、不倫関係に悩む、有村架純演じる沙都子、子育てを終えて新しい時間を手にした、石田ひかり演じる里子。彼女たちが書き留めるのは、人生を大きく変えるような事件ばかりではない。好きなもの、うまくいかなかったこと、ふと心に引っかかったことなど、日々の中にある小さな感情だ。
人は、同じ景色を見ても、同じように心を動かされるわけではない。何を面白いと思い、何をうれしいと感じるか。そんな小さな反応の積み重ねが、その人らしさを作っていると思う。
姫野の話を聞いて、日常にある小さな出来事を、もう少し大切にしようと思った。大きな賞を受けることだけが人生のハイライトではない。好きなものを贈られた瞬間も、ちょっとした面白い出来事も、その人にとっては忘れたくない一日になる。
取材の最後まで、姫野はよく笑っていた。目の前の世界には、小さくてもまだまだうれしいことや面白いことがある。そうに思わせてくれる人だった。【加藤理沙】