政界地獄耳

「GAFA」がもたらしたもの/政界地獄耳

★GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)を単純に見てはいけない。現在GAFAの合計売上高は70兆円を超え、日本の税収(約60兆円)を大きく上回る。だがかつての多国籍企業とは異なり工場や営業所を持たずネット間で取引するGAFAは国家の単位での恩恵をもたらさない。それで各国が税金を払わせようと国内法を整備しようとする。いわゆるデジタル税だ。

★GAFAはいずれも米国のベンチャーIT企業だ。ほんの20年未満の歴史を持つこの4つのIT企業に私たちも何らかでお世話になっている。検索エンジンとして、パソコンや携帯端末として、コミュニティーの連絡網や情報交換、備忘録に、そして生活に欠かせない必需品から嗜好(しこう)品までクリックすると瞬く間に送付してくれる。既にGAFAは世界のインフラの一部、いやかなりの部分を占め始めているのではないか。

★世界人口75億人のうち、12億人が毎日35分はフェイスブックを見ているという数字がある。グーグルとフェイスブックは広告収入で競い合い、その端末はアップルが供給する。前五輪相兼サイバーセキュリティ担当相が知る由もない世界だ。既に世界の物流産業はアマゾンに翻弄(ほんろう)され続けている。

★GAFAの特徴は3つある。第1に権威よりも個人がそれぞれの目標と幸福を定義できるとする「個人主義思想」、第2に一部の天才が社会を前進させる原動力になるという「英雄礼賛文化」、第3に最小限の国家の介入を理想とする「自由市場経済」。小売りより通販に依存し、新聞よりネットでニュースを読む習慣は手軽さや便利さ、経済的な負担減をもたらした。だが一方で、その反対側にいた小売りや製造業、物流や情報産業は急激に衰退、環境が激変した。それをGAFAは進化や進歩というかもしれないが、明確な勝ち組と負け組を生んだ。まさに政府の介入や法的規制を嫌う新自由主義経済の見本といえる。(K)※敬称略

政治の世界では日々どんなことが起きているのでしょう。表面だけではわからない政界の裏の裏まで情報を集めて、問題点に切り込む文字通り「地獄耳」のコラム。けして一般紙では読むことができません。きょうも話題騒然です。(文中は敬称略)

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