政界地獄耳

東アジアの秩序崩壊と新秩序の入り口/政界地獄耳

★日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)について、韓国政府は日本が貿易管理上の優遇対象国から韓国を安全保障上の理由から除外したことを理由に破棄すると発表した。日韓の政府関係者、防衛関係者、経済関係者たちは「大変だ」と大騒ぎだ。だが冷静に見ればホワイト国を安全保障上の問題があるとして除外したのは日本で、安保上の信頼ができないと言い出したのは日本側なのだ。「大変」なのは今までの秩序の枠組みを日韓が壊したということにあるのではないか。

★つまり日本が防衛上好ましくないというのならば、韓国政府がGSOMIA破棄にかじを切るのは当然だ。ただ、米国のポンペオ国務長官を筆頭に米国務省や国防総省がGSOMIAの破棄について「失望と懸念」と述べたことは、日韓と米国との問題を既に超えた次元に東アジア界隈が足を踏み入れたことを示唆したに違いない。米国から見れば米日韓の防衛トライアングルはロシア、中国、北朝鮮の包囲網でもある。

★米国に助けを求めても米国が動かず、日本がいい気になって韓国を意地悪く追い込んでいけば、文在寅政権は韓国の歴代軍事政権と前・朴槿恵政権の決めたことを否定してここまで来たのだから、ここまでの想像はできたはずだ。当然、韓国は北朝鮮との関係改善で日本との対峙(たいじ)は容易になるだろうが、韓米関係はぎくしゃくしかねない。そこに中国やロシアが介入するのは時間の問題だ。それでなくとも香港や台湾など火種を抱えて、東アジアは極めて複雑な状況を生む。東アジアのいくつかの政権が余波を受ける可能性もある。つまりこの話は東アジアの秩序の崩壊と新秩序の入り口にあるということではないか。歴史問題の不用意な修正でこじれた日韓関係は国際社会の枠組みを変えつつある。結果、日本の防衛上の負担は今以上になりかねない。(K)※敬称略

政治の世界では日々どんなことが起きているのでしょう。表面だけではわからない政界の裏の裏まで情報を集めて、問題点に切り込む文字通り「地獄耳」のコラム。けして一般紙では読むことができません。きょうも話題騒然です。(文中は敬称略)

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