政界地獄耳

リニアと静岡 夢と戒め/政界地獄耳

★2027年の開業を目指すJR東海のリニア中央新幹線の進捗(しんちょく)が芳しくない。ことに静岡の反発が強い。東京や国交省をはじめ中央官庁からみれば静岡のわがままに聞こえるのかもしれないが事態はそんな簡単なものではない。リニア計画では都内から山梨を通り静岡を抜けて名古屋に伸びるルートだが、静岡県内には駅ができずトンネルが地下を通るだけ。県民にはリニア開通のメリットはない。

★3日、静岡県掛川市はリニューアル工事に伴う大井川の流量減少問題をテーマにした「掛川の水について考えるシンポジウム」を開いた。静岡新聞によれば基調講演でリニア問題を統括する静岡県環境保全連絡会議本部長の副知事・難波喬司はリニア県内区間のトンネル湧水が県外に流出しても、大井川の水が減らないとするJR東海社長・金子慎の主張を「全く理解できない。流出した水は決して大井川水系に戻らず、水系全体の水は必ず減る。話にならない」と批判している。

★大井川の水系を産業、生活の基礎としているいわゆる利水者は00年5月に新東名高速道のトンネル掘削工事で、簡易水道や沢が枯れた歴史を想起させ不安視するからだ。日本道路公団に工事と水枯れの因果関係を認めさせるまでの苦労も多かったからこそ、工事前に話し合いたいのだ。加えてJR東海が県と距離のある静岡市を一本釣りのように懐柔。利水自治体が県と歩調を合わせる中、抜け駆けのようにインフラ整備を条件に4日からリニアの南アルプストンネル静岡工区の建設現場につながる林道改良工事を始めた。つまりJR東海との生活交渉がJR東海の交渉術のために政治案件に変質したのだ。今後、カジノなど自治体は大規模施設誘致に活路を見いだそうとするだろうが、静岡の取り組みは全国の自治体の浮ついた“夢のような”計画の戒めとなるだろう。(K)※敬称略

政治の世界では日々どんなことが起きているのでしょう。表面だけではわからない政界の裏の裏まで情報を集めて、問題点に切り込む文字通り「地獄耳」のコラム。けして一般紙では読むことができません。きょうも話題騒然です。(文中は敬称略)

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