早期に問題指摘されていた 大学入学共通テスト会議

英語民間検定試験と国数記述式問題の導入が見送られた大学入学共通テストについて、文科省は24日、制度設計などを検討した2つの会議の議事概要などを公開した。2016年時点で既に地域格差や採点ミスの可能性を指摘。今年に入っても制度への疑問の声が増す中、見切り発車していたことがうかがえる。

2つの会議は自由な意見交換ができるようにとの理由で当初は非公開で開催。会議後も議事概要などは示さなかったが、検証のため公開した。

16年5月に始まった「『大学入学希望者学力評価テスト(仮称)』検討・準備グループ」では、委員が民間試験について「地域によって全く条件が違う」と発言し、導入見送りの要因となった地域格差の問題を指摘。記述式問題にも「採点の統一性確保が困難という問題点は解決できるのか」などの意見が出た。

検討・準備グループは具体的な制度設計に向けて設置され、高校や大学関係者らが委員に就任。途中で名称変更し、19年5月まで計14回開催。うち第10~14回は公開で行われ、非公開だった第1~9回の議事概要や配布資料を明らかにした。

「大学入試英語4技能評価ワーキンググループ」は18年12月~今年9月に計6回実施。高校や大学関係者のほか、民間試験を運営する6団体も委員となり、6回全ての議事録と配布資料が公開された。

この中では「島しょや山間部の子は検定会場まで出てくるまで大変な思いをしている」「公平、公正性の担保を」といった指摘が相次ぎ、問題点への対応が進んでいなかった実態が見えた。

議事概要や議事録の一部は、委員の要請で黒塗り。文科省は年明けをめどに、導入経緯の問題点を検証する会議の初会合を開催し、2024年度開始を目指す新たな英語試験の在り方なども話し合う。(共同)

大学入学共通テストの経緯は以下のようなものだ。

■2013年10月 政府の教育再生実行会議が大学入試センター試験に代わる新テスト導入を提言

■14年12月 中教審が20年度からの新テスト実施を答申。英語の民間検定試験活用や記述式問題採用を盛り込む

■16年5月 文部科学省が「『大学入学希望者学力評価テスト(仮称)』検討・準備グループ」の第1回会議を開催

■17年7月 文科省が新テスト「大学入学共通テスト」の実施方針

■18年3月 大学入試センターが共通テストで活用する民間試験を発表

■18年11月 共通テストの試行調査。記述式で補正が必要な採点ミス判明

■12月 文科省が「大学入試英語4技能評価ワーキンググループ」の第1回会議を開催

■19年6月 共通テストの問題作成方針

■11月1日 萩生田光一文科相が英語の民間検定試験の導入見送り発表

■12月17日 萩生田氏が記述式問題導入見送り発表

■24日 文科省が2つの会議の議事概要などを公開