クルーズ船乗客、配給の食事に嘆き「給食のようだ」

5日正午すぎに横浜・大黒ふ頭沖から外海に出るクルーズ船ダイヤモンド・プリンセス(撮影・村上幸将)

香港男性(80)の新型肺炎コロナウイルス感染が確認されたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で5日、新たに乗船者10人から陽性反応が出た。厚生労働省は、乗客と乗員約3700人は2週間、横浜港に停泊する船内で待機させる方針を示した。乗客は客室待機の指示に加え、食事もビュッフェ形式から各部屋への配給制になるなど不自由な生活を強いられている。船では待機する期間が14日以上と説明されており、不透明な先行きに不安の声が出ている。

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3日午後11時から4日にかけて行われた検疫の結果、乗船者の中から陽性反応が出たことを受け、船では午前6時半過ぎにアナウンスが流れた。厚労省の指示を受けて、全乗客に客室待機を求めるものだった。同8時20分には陽性反応が出た10人が病院に緊急搬送された報告があり、同11時56分には「検疫には向こう14日以上かかるという通達がきております。(中略)早くとも14日後」と伝えられた。

乗客は無料になったWi-Fiを使い、SNSで船内の状況を発信した。30代男性はツイッターで「個人的にはもう感染したつもり(中略)やれることをやるだけです。怖い悲しいなどの感情は関係ありませぬ」と報告。また「昨日から隣の部屋で男の人が結構、せきをしてますが。大丈夫なのか」と不安も吐露した。

食事は5日朝から配給制となり、マスクを着けた乗務員が各部屋に配った。朝食はハムとチーズを挟んだクロワッサンと菓子パンに果物とヨーグルト、昼食はハムレタスサンドイッチ、パスタと肉の炒め、ポテトチップスにプリンが出た。従来のビュッフェ形式からの落差が大きく、一部の乗客は「この食事で14日間はつらい」とツイート。「給食のようだ」と嘆く人もいた。

船側は環境の改善に必死だ。持病を持つ乗客から薬がなくなるとの相談を多数受けたとして午後6時50分、医薬品の追加の依頼書を配布し、無料で手配の調整をするとアナウンス。海外の乗客が情報収集できるようオーストラリア、米国、インド、中国の放送局もテレビで視聴可能にした。

最初に感染した香港人男性の近くで長時間、過ごした濃厚接触者が、乗客に36人いることが厚労省への取材で分かった。うち2人は新たに感染が確認された10人に含まれており、感染拡大の可能性は否定できない。海上で封鎖された船内の中、いつ帰宅できるか見通しが立っていない。

◆ダイヤモンド・プリンセス 米国の船会社が保有する英国籍の船。三菱重工長崎造船所で日本造船史上最大の客船として建造。04年に就航。全長290メートル、全幅37・5メートル、総トン数11万5875トン。乗客定員2706人。主要ダイニング5つ、プール4つ、劇場、カジノ、チャペルを備える。