モテなくて「グヤジイ」、ボーナスが出ればキャバレーに行って「ムヒーッ」…。5日に死去した漫画家の東海林さだおさんは、さえないサラリーマンの日常をユーモラスに描き、読者を笑わせる天才だった。半世紀以上連載が続いた「タンマ君」と「サラリーマン専科」は、「週刊文春」と「週刊現代」の名物漫画として支持された。
サラリーマンを経験したことがない東海林さんは、アイデアを求めて酒場に足しげく通っていた。そこで観察した泣き笑いは、モーレツ社員たちが裏面に隠した人間的な部分を作品化することにつながった。親近感を抱かせる一連の作品で、97年に「雑誌読み物に新しい領域を開いた」と菊池寛賞を受けた。
終生、ユーモラスに生きることを大切にした。自身のことを「絶滅危惧種のナンセンス漫画家」と呼んでいたことも印象的だった。昭和、平成、令和と時代が下るにつれて、多くの漫画家が写実的な表現技法を取り入れていき、「『劇画』ばかりになって、漫画にユーモアがなくなっていった」。かつては漫画界の一翼を担っていた「ヘタウマ」な絵のナンセンス漫画の復権を、最期まで願っていた。