藤井聡太棋王就位式で脳科学者の中野信子氏が祝辞 AI全盛下「人類希望の星」「ある種の極限」

就位状を手にする藤井聡太棋王

将棋の第51期棋王戦コナミグループ杯5番勝負を制した藤井聡太棋王(竜王・名人・王位・棋聖・王将=23)の就位式が16日、東京都千代田区の「ホテルニューオータニ」で行われた。棋王戦初となる、2年連続同一カードとなった増田康宏八段(28)との今シリーズは、フルセットの末に3勝2敗で防衛し、4連覇を果たした。

式では脳科学者の中野信子氏が花束を贈り、祝辞で藤井に対する興味について語り始めた。

「ちょっと残念だと思うこと」として、「何を食べたとか礼儀正しいとか、そんなことを聞きたいかしら? そんなことは、分かっている。私たちが知りたいのは、人類のある種の極限がここにいる。脳科学の立場からこんな人、めったに存在しないわけで、そこに興味津々。解剖したりしたいとは思っていないので安心していただきたい」と、冗談交じりにいきなり周囲を引き込んだ。

中野氏は、かつて科学誌に掲載されたプロ棋士とアマチュアの指し手でどう脳の働きが違うかについても語った。「アマは前頭葉を非常に活発に使う。プロは非常に興味深くて、前頭葉はあまり使っていない」と違いについて切り出した。アマは論理的思考、先々を考える、分岐まで1手1手考えるという思考ではなく、プロは身体感覚でやっているんじゃないかと踏み込んだ。

式の前に、藤井と話したという中野氏は、「直感というところをお話しになっていて、研究結果とそこは一致するんだろうということを改めて確認した。これは面白いこと」と、人体実験の確認結果を興味深そうに展開させた。

現在、便利に使われ、AIには東大や京大の入試でもトップクラスで合格する性能がある。そんな中で、「モデルの崩壊」という言葉を挙げた。「AIが欲しているデータが枯渇してきて、食い尽くして学習データがなくなりつつある。そうするとAIは自分が合成したデータを学習して生成してきて、おかしなことになっちゃう。モデルが数年のうちに崩壊してしまう。つまり、AIは純粋な生データに飢えている。AIは前頭葉で考えているようなもの。1手1手しらみつぶしに考えて、そこからの最適解を持ってくる」とアマの思考回路と重ね合わせた。

そのうえで、「どうも、プロ棋士はAIと違うアーキテクチャー(思考回路)で最適解を見つけている。そこはまだ分かっていないんです。どんなプロセスで最適解が浮かんでくるか分かっていない。AIはそれを食いたくてしょうがない。私たちも、それを解明したいと考えている者の一派です」とした。

祝辞の最後に「藤井棋王と同じ時代に生まれたことはとてもラッキーだと思いますし、彼が見せてくれるビジョンで浮かんでくるその景色の一端を対局の一戦一戦でこれからも見せてくれると思うんです。それを楽しみに、人類の希望の星として応援をしていきたいと思います」と述べていた。