政府は、医療費の患者負担を抑える「高額療養費制度」の見直しに関するパブリックコメント(意見公募)に約5300件が寄せられたと明らかにした。通常の公募と比べ異例の多さで、自己負担の月額上限引き上げなどへの反対意見が殺到した。だが、政府は当初の方針を修正せず8月から実施した。識者は「民意を聞いたというアリバイ作りだと言われても仕方ない」と批判している。
自己負担の月額上限は、基準額が8月1日から所得に応じて4~7%引き上げられた。来年8月からは、今年7月末時点と比べ最大38%増となる。一方、長期治療が必要な患者の過度な負担を避けるため、年間上限額が新設された。
厚生労働省はこれらの見直しに関する政省令の決定に先立ち、6月上旬から1カ月間、意見を募り、7月29日に結果を公表した。政府の他の公募を見ると意見数は0~数十件程度のケースが目立ち、今回は突出して多かった。
寄せられた意見では「経済的な理由で治療や受診を諦める患者が増える」「経済力によって命を選別することにつながるため容認できない」などの訴えが相次いだ。「制度を利用する当事者の意見が十分に反映されていない」「物価が上昇し、家計負担が増えている状況で引き上げるべきではない」との批判も見られた。
一方で「負担能力に応じた制度設計という観点からは一定の合理性がある」と肯定的な声も一部あった。
厚労省の担当者は、反対が多かったのに政令などを修正しなかった理由について「将来にわたって持続していくためには制度の見直しが必要と判断した」と説明する。
意見公募は、行政機関が政令改正などをする際、事前に意見を聞き、考慮することで行政運営の透明性を確保し、国民利益の保護に役立てることが目的とされる。
学習院大の常岡孝好教授(行政法)は「公募期間が見直しの直前で、修正する時間がほとんどない。意見を反映する意思があったのか疑われる」と指摘。「民意をすくい上げ、より良い政策に導くという意見公募制度の本来の趣旨に立ち返るべきだ」と強調している。(共同)