日本のストリップショーは今年で誕生70周年を迎えた。最盛期は全国で300軒以上あったストリップ劇場も今では20軒を切るまでに減少。絶滅の危機と言われる一方で、その芸術性に注目した女性客が急増するなど新たな動きも見られる。今回から7回にわたって、ステージで観客を魅了し続ける個性的なストリッパーたちに話を聞くことで、“ストリップの今”に迫ってみたい。


ストリップ誕生70周年

みおり舞
みおり舞

 バレエ界の若手の登竜門「ローザンヌ国際バレエコンクール」の2009年のセミファイナリストであるみおり舞(26)が老舗劇場「浅草ロック座」で鮮烈なストリップ・デビューを飾ったのは昨年3月のことだった。ぴたりと決まるY字バランスなど、世界レベルのバレエの技術を交えたステージに観客の目は釘付けとなった。その後もロック座には定期的に出演し、今年の正月公演では生の和太鼓の音に合わせてダイナミックなダンスを披露。4月後半から5月末までの「能」とストリップを融合させた公演では、繊細な動きで幻想的な世界観を表現することに成功していた。

 誰もが気になるに違いない、バレエからストリップへの転身の経緯をみおり本人に聞いてみた。

「プロとしてバレエをやっていた母親の影響で2歳半から踊り始めて、ずっとバレエ漬けの毎日でした。18歳の時にDVD審査に受かって出場したローザンヌのコンクールでは結局入賞できなくて、悔しさしかなかったです。私の分と現地に同行して下さった先生の分の旅費や滞在費、指導料とか全部合わせて約200万円かかりました。ちょうどその頃に両親が離婚したこともあって、私が借金として背負って返していくことになって。バレエ団で踊りながら夜の仕事をしたり、しこたま働いて2年間で返し終わりました。それで、お金を稼ぐことと表現することの比率を何とか同じバランスにできないかなと考えていた時に、とりあえず有名になるためにAVの世界で頑張ってみようと思って。AVから有名になった人が結構居ることも知ってましたから…」

 自ら志願してAV女優となったみおりは、バレエ経験や軟体性を生かした作品に多く出演。すぐに浅草ロック座から出演のオファーが舞い込んだ。

 「当時はストリップを見たことなかったし、ずっと大事にしてきたバレエを“脱ぎもの”にして踊ることに抵抗があって、お断りしていました」

 浅草ロック座は全国のストリップ劇場の中で唯一、群舞のあるレヴュー型式のショーを上演している。公演ごとにショーのテーマがあり、豪華な設備による照明・音響に加えて、プロジェクションマッピングなど最新の演出効果を取り入れることも少なくない。再び出演オファーのあった2015年秋に、みおりは初めて同劇場の公演を見ることに。

 「演出が面白くて感動しました。最初にお誘いのあった時に見ていたら、その時からやっていたと思います」

 現在はAVとストリップの仕事を並行させつつ、様々なイベントでも踊っている。

バレエからストリップに転身したみおり舞
バレエからストリップに転身したみおり舞

 浅草ロック座以外の劇場に出演する際は、約20分のソロ・ステージの構成・振付・選曲を自ら担当する。3月の新宿ニューアートでは、モーリス・ベジャールの振付で有名なバレエの名作「ボレロ」をみおり流にアレンジして踊ってみせた。肩や背中の筋肉を細かく動かす静かな導入部から、全身で大きく踊るクライマックスまで、ストリップの歴史に残るような質の高いステージだったと言える。

 「円形のステージとか、上から当たるスポットライトとか、『ボレロ』にはストリップと共通するものがあったので、やってみようかなと。いろいろ動画を見たりしましたけど、あまり意識せず、型にハメずに、いつもその場で作りながら踊っていました。お客さんの反応は賛否両論でしたね。客席で泣いている方もいましたし、『もっと正統派のストリップっぽいものをやってほしい』と言う方もいました」

 人気のあるベテランのストリッパーはダンスの上手い・下手を超えて、指先まで神経の行き届いた動きと間合い、視線や表情などで、場内に官能的な空気を充満させることができる。ストリップ・デビュー1周年を過ぎて、みおり自身はそうしたことが今後の課題だと考えるようになったという。

 「ステージで自分のエロさをどうやって出すか…。どうしても自分の中で計算して完璧に表現することを目指しちゃう部分が強かったので。だから、本当に、ここからだなという感じなんです」

【西条昇】

見事なバランスを見せるみおり舞
見事なバランスを見せるみおり舞

◆みおり舞 出演情報

・6月3日(土)開場24:00「デパートメントH」

 会場:鶯谷・東京キネマ倶楽部 http://www.kinema.jp 03・3874・7988

 料金:¥5000

 情報: https://ameblo.jp/department-h/entry-12274163975.html


・6月4日(日)開場17:00「第五回しこたま談ス。」~みおり舞&武藤つぐみのダンスユニット【上京29:30】と呑んだくれ初夏の宴~

 会場:新宿LEFKADA 03・5366・0775(11:00~20:00)

 料金:¥3000

 情報: http://lefkada.jp/schedule_1706.html

     https://t.livepocket.jp/e/nztuc

浅草ロック座の前で
浅草ロック座の前で

 ◆西条昇(さいじょう・のぼる)1964年、東京生まれ。江戸川大准教授。専門はジャニーズ、お笑い、ストリップなどを中心とした「舞台芸術」と「大衆芸能史」。新聞・雑誌へのコメントと執筆、テレビ出演も多数。著書に「ニッポンの爆笑王100」など。今年3月には浅草・東洋館でストリップ誕生70周年イベントの企画・構成・司会を担当した。http://saijo-noboru.blog.so-net.ne.jp/