日本のストリップショーは今年で誕生70周年を迎えた。最盛期は全国で300軒以上あったストリップ劇場も今では20軒を切るまでに減少。絶滅の危機と言われる一方で、その芸術性に注目した女性客が急増するなど新たな動きも見られる。7回にわたって、ステージで観客を魅了し続ける個性的なストリッパーたちに話を聞くことで、“ストリップの今”に迫ってみたい。


日本のストリップ誕生70周年


 今までにストリップを見たことがある人の中で、意外に多いのが「会社の慰安旅行で行った温泉地のストリップ劇場で一度だけ見た」というケースである。そこでは、かなり高齢の踊り子が「花電車」と言われる秘芸(もともとは遊郭発祥のお座敷芸)を披露していたという。

 確かに、そうした温泉地のストリップ劇場は秘宝館と並ぶ昭和の温泉名物として全国至るところにあったのだが、景気の悪化で会社の団体旅行が減るにつれて全国で数軒にまで減少している。

 今年1月には、静岡県熱海市で長年続いてきた「熱海銀座劇場」が専属の踊り子の体調不良により存続の危機にあるとの内容がツイッターに投稿され、同時に踊り子の募集も行われた。

このツイートを見て、2月から定期的に同劇場のステージに立つことになった一人の女性がいる。

 名前は清水くるみ(29)。


清水くるみ(撮影・西条昇)
清水くるみ(撮影・西条昇)

 昨年10月までは普通のOLだった。SMの縛りに興味を持って、いろいろなイベントに足を運ぶうち、ストリッパーの御前珠里が自らを縛るステージを見て大きな衝撃を受ける。

 「私もああいう綺麗なステージが出来たらいいなと思いました。その頃、勤めていた会社が無くなることになったので、じゃあ、自分の好きな活動をしていこうかなと…」

 OL生活を終えた清水は、昨年暮れに、学生時代に気に入っていた坊主頭に戻すための断髪式を会場を借りて開催。憧れの御前にコンタクトを取り、自らを縛って吊るすパフォーマンスの指導を受けて披露した。

 「踊り子募集のツイートは見て気になっていたんですけど、(御前)珠里さんから『見た?』って連絡いただいて、実際に応募してみることにしました。面接と見学を兼ねて熱海に来て、2月の出演が決まりました」

 5~7人の踊り子が出演する都市型のストリップ劇場とは違い、温泉地の劇場の踊り子は1~2人。熱海銀座劇場では基本的に踊り子一人で40~50分のショーを繰り返し上演する。

 「ここに出させていただくことになって、自分で振付を考えて15分くらいのストリップの演目を2本用意しました。1本目が終わると、衣装を羽織って、そのままステージでおしゃべりして、楽屋で次の衣装に着替えたら2本目の演目を踊って一区切りという構成です。ステージではウイッグをつけていますが、最後に外して坊主頭であいさつすることもあります」

 同劇場には2月に3日間、3月に4日間、4月末から5月頭のGWに10日間出演した。

 「GWの3日間は特別にいつもの19時開演より早い16時開演でしたが、ずっとお客様が途切れずに入れ替わる日があって、私は急いで楽屋で着替える時以外、7時間ぶっ通しでステージにいる状態でした(笑)」


キレの良い動きで踊る清水くるみ(撮影・西条昇)
キレの良い動きで踊る清水くるみ(撮影・西条昇)

 照明係がいないために赤いライトに照らされたままの小さなステージで、清水はキレの良い動きで踊り、明るい色気を振りまいてみせる。トークも明るく丁寧で観客を飽きさせない。

 「おしゃべりのネタに、自分でイラストを描いて作った『日本全国ストリップMAP』をお客様に配って、ストリップのことを話しながら『ぜひ、お近くの劇場に行ってみてください』とオススメしているんです」

 ここの観客の約7割以上は酔った勢いで訪れるグループ客で、残りがストリップや昭和の文化が好きな人たちだそうだ。

 「東京から日帰りで来られる方もいらっしゃいます。ご高齢の踊り子さんや“花電車”を期待して来られたお客様には『ごめんなさい、私で…』と謝るようにしています」

 温泉地の劇場のイメージを覆す20代の新人踊り子の出現に、同劇場のママさん(社長夫人)も、「しっかりしてるし、行動的だし、これから有望なんじゃないですか。今後も出ていただければ」と期待を寄せる。


清水くるみ自身が作成したチラシの前で(撮影・西条昇)
清水くるみ自身が作成したチラシの前で(撮影・西条昇)

 6月は18日まで熱海銀座劇場、21~30日はニュー道後ミュージックに出演する。

 最後に、清水が考えるストリップの魅力について聞いてみた。

 「アート的な面と風俗的なエロさとの中間というか、両方の要素が重なり合っているところが独特の文化だと思いますし、その曖昧さが面白いですね」


熱海銀座劇場
熱海銀座劇場

 ◆西条昇(さいじょう・のぼる)1964年、東京生まれ。江戸川大准教授。専門はジャニーズ、お笑い、ストリップなどを中心とした「舞台芸術」と「大衆芸能史」。新聞・雑誌へのコメントと執筆、テレビ出演も多数。著書に「ニッポンの爆笑王100」など。今年3月には浅草・東洋館でストリップ誕生70周年イベントの企画・構成・司会を担当した。http://saijo-noboru.blog.so-net.ne.jp/