小池百合子都知事率いる都民ファーストの会と自民党が激しく争う都議選(2日投開票)は1日、波乱の最終日となった。国政の逆風に吹かれる自民党は安倍晋三首相が、秋葉原で今回の都議選初の街頭演説に立った。聴衆から「安倍ヤメロ」のコールに包まれる中、森友学園の籠池泰典前理事長まで乱入し、大荒れとなった。

 自民党が選挙の最終舞台として選んできた“ホーム”が、怒号に包まれた。引退した都議会の「ドン」こと自民党内田茂氏の後継候補中村彩氏と、都民ファの樋口高顕氏が争う千代田区のJR秋葉原駅前。陣営が配った日の丸を手に安倍首相の演説を待つ大勢の支持者の外側で、「安倍政権ふざけるな」などのプラカードを持った聴衆から「安倍ヤメロ」コールがわき上がり、広がった。それが突然、一部で「カーゴイケ!」に変わる。選挙カー正面、聴衆と報道陣でもみくちゃになった人だかりの中心に、日の丸を持った籠池氏本人がいた。

 「説明責任を果たさない国政の責任者が演説すると聞いてお邪魔した」。あまりの混乱に、警備の警察官から聴衆の外側に誘導されたが、首相が到着すると、今度は歩行者デッキの聴衆の最前列へ。首相が「逆風でも愚直に政策を訴える中村さんのような候補が信用できる候補だ」と訴えると、籠池氏は「信用できる人が言えばいいが、信頼できない人が言ってはだめだ~!」と声を上げた。首相夫人の昭恵氏から受け取ったとする100万円を「機会があったら返したい」として、分厚い札束も持参。首相に「本当のことを言え~」などと絶叫した。

 首相は26、28、30日に自民候補の応援に入ったが、ヤジ対策か、これまではすべて室内だった。森友学園、加計学園、豊田真由子衆院議員の暴言暴行、稲田朋美防衛相の自衛隊発言など、問題が相次ぐ中で迎えた最終日の初街頭。自民党が旧民主党から政権奪還した12年衆院選以降、衆参計4回の国政選挙で最終舞台に選んだ「験がいい」(党関係者)秋葉原でも、反安倍の怒号が響いた。

 演説をかき消すほどの「安倍ヤメロ」コールに、首相も「演説を邪魔するような行為を自民党は絶対しません。こんな人たちに負けるわけにはいかない! 都政を任せるわけにはいかない!」などと、国会答弁で反省したはずの“強い口調”で反撃した。

 籠池氏は「森友が発端となって数々の疑惑が続き、この内閣はまずいという風が起きた。逆風は安倍首相が招いた」と批判した。首相は「批判ばかりなのか、建設的なことを言えるのかを見てほしい」と演説を締める一方、聴衆から「帰れ」のシュプレヒコールも浴びていた。【清水優】