東京都議会で1日、開かれた経済・港湾委員会で「都民ファーストの会」が、豊洲市場内で計画されている観光拠点「千客万来施設」の事業者「万葉倶楽部」(神奈川県小田原市)が、築地再開発の内容によっては事業から撤退し、都への損害賠償請求を検討していることについて、法的根拠がないとし、請求できる立場にないと主張した。

 都民ファの樋口高顕都議は、都が万葉倶楽部との基本協定(16年6月締結)に違反していないと主張。「都が築地再開発をしないことや、中央区や場外市場の方々の努力を応援してはならないと基本協定書などで、東京都が債務(義務)を負っているわけではない」と話し、都には責任はないと訴えた。

 11年11月、中央区長が石原元知事に提出し、築地市場跡地の一部に食文化を継承する施設を整備するよう求めた要望書を根拠とし「(千客万来施設の)募集要項(作成)時点でも前提としていた」との持論を展開し、小池百合子知事が6月20日に出した「築地再開発」の方針は「新しいことではない」と言い切った。

 樋口氏は「応募に関する経費は、応募者の負担だから問題にはならない」、「まだ工事も始まっていないので、考えられる経費は基本協定締結後の準備経費となり、これは損害と評価されない」と続け、さらに「これらの経費について『築地再開発』が損害として因果関係にあるのか」と問いかけた。

 舛添知事時代の15年9月に出した千客万来施設の募集要項には、民間事業者に求める施設整備・運営等として、「飲食・物販店舗の当初の入居者は場外市場事業者に広く周知した上で選定することとする」との“条件指定”が書いてある。募集要項は都が定めたものにもかかわらず、この点も「行うのは事業者だ」と責任は「万葉倶楽部」にあると切り捨てた。

 その上で「募集の段階で、中央区や場外市場は築地市場が豊洲に移転した後も『築地魚河岸』を中心に、築地特有のにぎわいを継承発展させる努力をし、現在もそうだ」と話し、「呼びかけした上で判断するのは場外市場などの経営者。都が決められることではない」などとし、千客万来施設に築地場外市場の業者を誘致できない責任は、都にはないとの主張を展開した。

 これについて、ある野党都議は「小池知事はそれまであった基本方針を大転換した。それを6月20日の方針発表前と後で『状況が変わってない』というのは、あまりにもだ。中央区の要望を拡大解釈をし過ぎている。この説明を事業者に直接できるのか…」と非難した。

 ある都職員は「細かい法律論ばかりで裁判を見ているようだ。あの質問はひどい。民間のことを考えていない。政治家の質問ではない」と嘆いた。

 樋口氏の質問より前に行われた小池氏の定例会見でも「万葉倶楽部」が損害賠償請求を検討していることを問われ「何をもって損害とするか、法的にチェックしなければならない」と反発する姿勢を見せていた。知事と都議会-。二元代表制の元、知事へのチェック機能を働かせるとした都民ファは、同じタイミングで歩調を合わせる形となった。