イスラム教の戒律で許されている「ハラルフード」を出すレストランがこのほど、東京都渋谷区にオープンした。日本で初めてハラル認証を受けたアメリカンシーフードチェーン「The Manhattan FISH MARKET(ザ・マンハッタン・フィッシュ・マーケット)」だ。当然、宗教上タブーとされる食材は使用していない。2020年東京オリンピック(五輪)・パラリンピックを控え、急増するイスラム圏からの訪日客などに対応。日本人客の味覚にも合うよう工夫して、人気拡大を狙っている。

 ハラルとは、「許されている」という意味のアラビア語。イスラムの教えでは、食べていい物といけない物が細かく定められている。一般的には、アルコールや豚肉がNG。ほかにも、豚から抽出したエキスが含まれる調味料や豚骨スープ、豚を調理した道具を使うこと、豚の入った冷蔵庫で一緒に保管された食材までが禁じられている。許されていないものを口にするのは罪で、神様に背くためだ。

 「ザ・マンハッタン・フィッシュ・マーケット」は、これらをクリアしたレストランとしてオープンした。一見、普通のレストランに見えるが、お酒や豚肉類はメニューにない。鶏肉、シーフードなどが中心。焼いたりあぶったり、米油で炒めたり、揚げたりなど、調理法は和洋中の料理と変わりがない。

 代表的なメニュー「マンハッタン フィッシュ&チップス」(980円=税抜き)は、白身魚のフライをタルタルソースで食べる。フライドポテトも付く。「サーモンと野菜のスープ バゲット付き」(1180円=同)も、すんなりおなかに入っていく。「8割は日本の食材を使っているので、日本人の味覚に合わせています。一方で、エスニックな辛さは向こうの人に合わせている」と、渋谷店の金子凌也マネジャー(27)は言う。

 オープンのきっかけは、スリランカ人のイスラム教徒である同レストランの社長、オマー・アリ・ハイダー・アリ氏の伯父が、日本で外食する時に不便さを感じたことだ。2013年から計画し、14年に「ザ・マンハッタン-」のチェーンが決定。その翌年にハラル認証を受けると同時に、東京・池袋で開業した。16年には愛知県常滑市のイオンモール常滑店にも開業。池袋の店舗が今年1月、渋谷に移転した。

 「イスラム教=中近東」というイメージが強いかも知れないが、インドネシアやインドなど、アジア各国の教徒も多い。最近では観光客だけでなく、技能実習生といった形で日本に滞在もしている。そんな人たちの胃袋を支える。

 渋谷、原宿が近いということもあり、若い女性も集まる。「お酒がまったくダメという日本人女性にとっても、ハラルフードはいいかもしれません。ハラル=体にいい物を食べなさいというヘルシーさも、受けているのかもしれません」(金子マネジャー)。

 同チェーンでは、2年後を見越して都内でさらに2~3店舗を開業させる予定。観光客に人気の、浅草やお台場などが候補地だ。東京だけでなく、関西や中部地区での展開も考えているという。【赤塚辰浩】