勇気をありがとう-。大阪府北部で震度6弱を観測した地震から一夜明けた19日、大きな被害が出た大阪府高槻市でも、サッカーワールドカップ(W杯)ロシア大会コロンビア戦の日本勝利を喜んだ。高槻市は、W杯に初選出されたGK東口順昭(32=G大阪)の地元。東口は試合には出場しなかったが、日本代表の果敢な攻撃と、強豪から奪った歴史的な勝利に、被災地の子どもたちは希望を見いだした。

 阪急電鉄「高槻市駅」の近くにあるカフェバー「K,S ALVAMAR」には、会社帰りのサポーターらが集まった。試合が始まると、肩を抱き、手を握り、テレビ画面に声援を送った。日本代表が初戦勝利を飾ると「ありがとう!」と口々に叫んだ。

 会社員、谷川裕介さん(23)は地震当日、通勤途中の電車の中に2時間、閉じこめられた。高槻市内の自宅は今も水道水の濁りがある。「正直、店に来て応援するか迷った。でも4年に1度の祭典。友達と楽しみたかった。嫌なことも忘れることができそう」と笑顔を見せた。同店に集まったサポーターは、ほとんどが地元の高槻市に住んでいる。

 JR高槻駅の北陸橋には、GK東口の横断幕が張り出されている。同駅前では休業が続く飲食店もある。高槻市サッカー連盟の寺田正治理事長(69)は「東口選手のPVはできなかったが、子どもたちは自宅で精いっぱい、応援するはずです」と話した。横断幕には、東口の出身校である高槻市立北日吉台小学校の児童が応援メッセージを寄せ書きした。世界の舞台で積極果敢に戦う姿を見せてほしい-。高槻市からサッカーW杯代表に初選出の東口、そして日本代表に子どもたちは思いを託した。

 18日朝に最大震度6弱を観測した大阪府北部地震。大きな揺れが日常生活を変えた。19日のコロンビア戦に合わせ、友達の自宅に集まり、テレビ観戦する計画があった子どももいたが、余震の不安があり夜間の外出は控えた。

 コロンビア戦の前、市立五百住(よすみ)小学校の臨時給水所を家族と訪れた小学6年の村田翔太さん(11)は、クラブチームの高槻FCでGKを務める。「大きな揺れは怖かった。日本代表には思い切りプレーしてほしい」と願った。

 東口だけではなく、日本代表には関西出身者が多い。先制点を挙げたMF香川真司は神戸市、MF本田圭佑は大阪府摂津市出身だ。寺田理事長は「日本代表の戦う姿は被災地の希望になる」と強調。横断幕は、日本代表がW杯で敗退するまで高槻に掲げられる。【松浦隆司】