自民党総裁選は最終日の19日、安倍晋三首相と石破茂元幹事長は東京都内の思い入れがある地で街頭演説した。首相は、聖地・秋葉原に立ったが、「反安倍」の一団がいるエリア前に首相支援ののぼりを乱立させ、批判の声を遮ろうとするなど、ぴりぴりムード。籠池泰典夫妻も“参戦”した。石破氏は首相陣営による圧力を、あらためて批判した。今日20日の投開票で首相の3選は確実だが、地方票の低投票率も懸念される。盛り上がらず、後味の悪さも残す戦いとなった。

今回の総裁選で、首相の東京での演説は初めて。北海道の地震対応で党主催の東京演説会は中止に。空中戦より組織固めを優先、アンチ安倍も訪れる街頭を避け、“逃げ恥”と批判される中で、最終日に満を持してのアキバ降臨となった。

首相は「6年前、日本を取り戻す戦いがこの場から始まった」と主張。第2次安倍政権の実績を並べたて、「批判ばかりでは何も生まれない。具体的な政策を前に進める」とも訴えた。

昨年6月、首相はアキバでの都議選の応援演説で、「安倍辞めろ」コールに「こんな人たち」とキレて、批判された。今回、首相に批判的なプラカードを持った聴衆は、選挙カーの左側後方の一角に集められ、そこから移動できなかった。彼らの視界を遮るように、「責任、実行 安倍晋三」ののぼりも乱立。首相を批判する声や言葉は、首相から見えにくい状態だった。

対照的に支持者は胸のシールで区別され、見やすいエリアに入ることができたが、支援議員に動員された人も多かった。陣営は、首相への批判的な言動を消そうと腐心していたが、それでも辞めろコールはやまなかった。首相と対立する森友学園の籠池泰典前理事長、諄子夫妻も“参戦”。籠池氏は「残念だなあ。こういう人が日本の首相になるのかと」とだけ語った。

首相は国会議員票の8割超を得て、3選は確実。ただ党員票は低投票率が懸念されるという。事実上の選挙戦短縮や、候補者討論の激減。あまりにも内向きの戦いだった。【中山知子】