同性間の結婚が認められないのは違憲だとして、同性カップル13組がバレンタインデーの14日に、全国4カ所の地裁で集団提訴する。

ただ一口に同性婚といっても、カップルの実情はさまざまだ。集団提訴に踏み切る思いとは何か。HIVと闘病する男性と、顔出しNGながらも訴訟参加を決断した男性のカップル。日本での国際結婚を求める日本人とドイツ人の女性カップル。原告2組の話を聞いた。

佐藤郁夫さん(59=NPO法人勤務)は03年、携帯の掲示板にプロフィルを書いたところ、よしさん(52=会社員)がアクセス。1週間後に会って意気投合しまもなく交際、同居が始まった。

 佐藤さんは97年にHIV陽性と診断された。性行為で感染。1年半ほど前まで免疫力の低下で入院が長引いた時期もあったが、現在は服薬で体調は安定。HIV陽性者とその周囲を支えるNPOに勤務している。佐藤さんは提訴について「セクシャリティにもHIVにも、まだまだ差別、偏見がある。元気で幸せになれると僕を見て勇気をもらえる人がいるなら、訴訟に加わる価値はある」と話す。

よしさんは家族や会社にカミングアウトしていない「クローズド」。特に会社は「お堅い」体質で、今回も理解を得られない可能性が高いと判断した。「それがなければ、一緒に顔出しして全然構わない」と苦渋の選択だ。ただ「佐藤さんがやるならパートナーとして支える」と決意は固い。

夕飯は一緒に食べ、ユーミンやコブクロのライブも楽しむ、仲の良い2人。お互いの将来も考えての提訴参加となる。

佐藤さん 命の期限はどこかで考えている。僕らの意識がなくなったとき、今の医療現場は血縁の家族を探す。クローズドのよしがそうなると、僕は「いないもの」なんです。最後の死に目に会えない。お別れはつらいけど、お別れすらできないって、もっとつらい。HIVで亡くなった方の周りでよく聞く。僕らにその日が来たとき「パートナーです」と、すっと入れるようになっていて欲しい。

会社員の中島愛さん(40)学生のクリスティナ・バウマンさん(32=愛称ティナさん)のカップルは、1月16日に横浜市内の区役所で婚姻届を提出した。5日後の21日、不受理の電話連絡を受けた。

2人はドイツでは法律上も婚姻関係だ。16年に同国で、結婚と同等の権利が得られるパートナーシップ制度に申請し認められた。中島さんは「ドイツでは法的に認められているので、結婚して当たり前、という感じ。市役所の方も祝福してくれた」と振り返る。17年に同国で同性婚が法制化され、昨年9月に正式に結婚。中島さんはドイツの永住権も取得している。

2人は11年、ドイツでフェイスブックを通じて知り合い交際開始。中島さんは13年、仕事の変化などを機に、ティナさんに憧れの日本での生活を体験して欲しいと、日本に住むことを決断。「一緒に行こう」と誘い、移り住んだ。

ティナさんは任天堂ゲーム「スーパーマリオ」や「ゼルダの伝説」が好きで、マリオカートは愛さんを圧倒する腕前。通っている学校もゲーム関係だ。ただ、学生生活が終わることに、不安がつきまとう。

ティナさん 私は配偶者ビザが受け取れない。今は学生ビザは持っていますけど、就職先が見つからないと、最悪ドイツに帰らなくてはいけない。怖いです。2人のもとへは、世界中の同性国際カップルからエールが届く。日本人女性と日本文化を愛するティナさんとの結婚が、ドイツで認められて、日本で認められない現状。中島さんは「一緒に住むことすら許されない。日本国民に対する侮辱でもある」と、訴訟への決意を示した。