統一地方選前半戦の6政令市長選が24日、告示された。札幌、相模原、静岡、浜松、大阪、広島各市が対象で、大阪市長選には、自民党が推薦する無所属新人の元市議柳本顕氏(45)と、政治団体・大阪維新の会新人の前知事松井一郎氏(55)の2人が届け出た。大阪は「都構想」をめぐり知事・市長のダブル選となる。「維新」VS「反維新」の大阪特有のガチ対決。維新は維新創始者の橋下徹元大阪市長(49)がいない初の統一地方選となる。

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大阪の繁華街・難波での第一声。松井氏は「今回も自民党から共産党までべったりとくっついた。大阪府市が二重行政と言われた時代に戻してはいけない」と反維新陣営を攻撃した。そろって街頭に立った知事選候補者、吉村洋文氏(43)は「大阪の改革を進めさせてほしい」と訴えた。

柳本氏は大阪市中央区の事務所前で「都構想議論に終止符を打つビッグチャンスだ」と声を張り上げた。反維新の知事選候補者の小西禎一氏(64)は「維新政治にNOを突きつける」と気勢を上げた。すでに始まっている知事選とともに市長選が告示され、真っ向対決のゴングが鳴った。

維新にとっては党の存亡をかけた戦いだ。松井氏が吉村氏とともに辞職、立場を入れ替えて出馬するダブル選。どちらか1人でも首長選で負けると、都構想はアウト。とりわけ「市長選は大接戦」(維新幹部)との声がある。代表として維新を率いる松井氏が敗れれば、維新は壊滅の危機を迎える。一方で維新は知事・市長選に勝利し、4月7日、同時に投開票される府議・大阪市議選を加えた4選挙で勝利すれば、大阪都構想の実現に大きく前進する。

街頭で松井氏は盟友の橋下徹元大阪市長(49)との改革実績も強調した。ただ今回は“橋下旋風”は期待できない。松井氏は盟友の応援について「かつての仲間だからこそ、彼の生活を邪魔をしたらダメだと思う」。維新関係者によると、橋下氏の街頭演説への“緊急参戦”の予定はないという。

一方、反維新勢力は結束を強める。前回15年のダブル選で自主投票だった公明党府本部は小西、柳本両氏を推薦、立憲民主党府連、共産党府委員会が自主的に支援するなど、自民党を含めた「維新包囲網」が敷かれている。

前回に続き、2度目の立候補となった柳本氏は今夏の参院選大阪選挙区(改選数4)の候補者として、自民から公認を得ていた。出馬を決断した際、親しい関係者に「負ければ政治家をやめる」と退路を断った。「大阪春の陣」。維新も反維新も背水の陣だ。【松浦隆司】

◆大阪都構想 大阪市を廃止して東京23区のような特別区に再編する制度改革。大規模開発や成長戦略などを府が、福祉など身近な住民サービスを特別区が担う。当時の橋下徹大阪市長が打ち出した。15年に住民投票が実施され、わずかの差で否決された。敗北を受け、橋下氏は政界を引退した。