スナックの空き店舗を使って文化を発信しようというイベント「アーツ&スナック運動」が20、21日、東京・上野の仲町通りで開かれる。近年、風俗街化、地盤沈下が進む同通りに危機感を抱いた地元商店主らが東大などと連携、さまざまな文化的イベントで街の持つ可能性を発信する。

上野一帯は、上野公園や寛永寺、東大や東京芸大、落語協会や鈴本演芸場など文化的資産に恵まれた地域だ。不忍池の南側、上野駅と上野広小路駅の中間あたりにある仲町通りは、かつて品のいい歓楽街として知られ、一流の商店が軒を並べる街だったと伝えられる。今も和装小物やそば店、写真館など創業100年以上の老舗も残るが、近年は風俗店が増えて、悪質な客引きやぼったくり被害も目立つようになった。

現状を憂えた商店主らが東大都市研究デザイン室などと街を調査したところ、テナントビルの上階や地下のスナックの空き店舗が目立った。イメージの悪化に不景気が重なって客足が遠のき、テナント価値が低下、2年以上も空いたままの店舗も珍しくないなど、借り主に敬遠される悪循環に陥っている現状が分かった。

そこで空き店舗を逆手にとって、6店でイベントを開催、回遊してもらい、新たな客層を開拓しようと企画した。東京芸大の学生が街で働く外国人女性を追ったドキュメンタリーの上映、地元和装店による帯結び、くみひも体験、落語の公演、バーチャル・ユーチューバーがママを演じるスナック体験のほか、地元の古老による街語り、スナックママやバーのマスターらによる座談会もある。

主催者のひとり東大都市デザイン研究室の永野真義・助教は「東京の東側は、重層的な街の歴史を感じられる地域だ。中でも上野は芸術や文化的資源に恵まれている」と分析。その上で「そんな上野の怪しげな雑居ビルに隠れた空きスナックから、この街が本来持っている文化性を発信したい」と話している。

20日は午後4時~10時、21日は午後1時~7時。500円の回遊チケットは2日間有効。一部追加料金が必要なイベントもある。