政府が新型コロナウイルス対策で急きょ「一律10万円給付」と方針転換して一夜明けた17日、麻生太郎副総理兼財務相が「今回は要望される方、手を挙げていただいた方に給付する」と発言した。「自己申告すれば給付する」と受け取れる言葉だけに、批判が噴出した。安倍晋三首相はこの日の会見でも全国民に一律給付と断言したが、政府に振り回され続けてきた国民にとっては、見過ごせない副総理発言となった。

麻生副総理兼財務相はこの日の閣議後の会見時点で、国民への10万円給付について次の趣旨の発言をした。「スピードが一番大事。できるだけ早く5月にはという感じ。今回は要望される方、手を挙げていただいた方に給付する。富裕層は受け取らない人もいるのではないか」。富裕層から事後に確定申告などで回収する方法には「物理的に不可能。ものすごく手間暇がかかる」と否定的考えを示した。

「ほしい人には給付する」「必要ない人に給付しないために、必要な人は手を挙げて」という認識に受け取れる発言だった。財源については「10万円が1億2600万人で、12兆6000億円かかる」などと話しており、予算上は全国民分を想定しているもようだが、言葉には乖離(かいり)があった。

何らかの事情で申告できない人などについてどう考えていたのかなどの疑問も残る。遅い、アベノマスク、休業要請とセットで補償を、優雅な動画、なぜ最初から全国民一律給付にしなかったのか…不信感が高まっている国民をまたも混乱させ、感情を逆なでしかねない言葉だったといえる。

この日の首相会見とも違った。安倍氏は「すべての国民のみなさんに一律に10万円を給付することを決断した」と断言。「混乱は私の責任。心からおわびします」とした。給付開始時期は5月中を目指し、給付手続きは、市区町村の窓口混雑を回避するため郵送やオンラインでの申請を検討し、非課税とするという。

麻生発言には、これまでのいきさつも背景にある。財務省も含め、一律給付には一貫して否定的だった。首相時代、リーマン・ショック後の09年に実施した一律定額給付(基本1万2000円)が効果がなかったと考えている。3月からも「一律現金給付が貯蓄でなく投資に回る保証は? みんな銀行にお金が余っている」「何に使ったか誰も覚えていない。2度と同じ失敗はしたくない。(国民に)受けなかった」などと発言してきた。

状況が悪化一方の今、国民に寄り添う言葉は別にあったのではないだろうか。