将棋の最年少タイトルホルダー、藤井聡太棋聖(18)が最年長タイトルホルダー、木村一基王位(47)に挑む第61期王位戦7番勝負の第3局が4、5の両日、有馬温泉(神戸市北区)の老舗旅館「中の坊瑞苑(ずいえん)」で行われ、先手の藤井が木村を破り、3連勝で史上最年少2冠にあと1勝とした。

第4局は19、20の両日、福岡市の「大濠公園能楽堂」で行われる。

「史上最年長VS史上最年少」と注目されるシリーズ。ほぼ互角で迎えた2日目。正午前に藤井が57手目で先手4五歩と仕掛け、本格的な戦いに突入した。

中盤、藤井が鋭い踏み込みから、巧妙な手順で攻めをつなぐ。粘り強い強靱(きょうじん)な受けから「千駄ケ谷の受け師」の異名をもつ木村は、相手の攻めを徹底的に受けた。藤井がリードして突入した終盤戦、切れ味鋭い攻めを連発した藤井が、木村の受けを振り切った。

開幕3連勝での王手にも笑顔はない。「寄せにいったところで誤算があり、その後、負けにしてしまったかもしれない。厳しかった」。最終盤の攻防戦、あわや大逆転負けの局面を振り返り、反省を言葉を並べた。

藤井は7月16日、最年少の17歳11カ月でタイトルを奪取した。初タイトルからわずか3週間で2冠に王手をかけた。史上最年少2冠は羽生善治九段(49)が持つ21歳11カ月。今シリーズを制すれば、この記録を大幅に更新する。

2冠を獲得すれば日本将棋連盟の八段昇段規定「タイトル獲得2期」を満たし、八段に昇段する。八段の最年少記録は「ひふみん」こと、加藤一二三・九段(80)が持つ18歳3カ月。第4局に勝てば、18歳1カ月での最年少八段も達成する。

王位戦は全国を転戦し、1局を2日かけて戦う持ち時間各8時間の7番勝負。先に4勝を挙げた方がタイトルを獲得する。

藤井は、棋聖戦に加え、前期リーグで残留した王将戦、あと1勝に迫った王位戦、本年度に最大3冠までの可能性がある。

王位戦第4局へ向けて「ここまでの将棋の内容を反省し、いい将棋を指したい」と意気込んだ。

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◆王位戦 将棋の8大タイトル戦(ほか名人・竜王・叡王・王座・棋王・王将・棋聖)の1つ。1960年(昭35)創設、初代王位は故大山康晴十五世名人。予選を経て、紅白各6人1組の挑戦者決定リーグを開催。トップがリーグ同星で並んだ場合は、挑決進出者を決めるプレーオフとなる。紅白各組のトップ同士が挑戦者決定戦を行い、勝者が挑戦者。タイトル戦は7番勝負の2日制で全国を転戦し、先に4勝した方が獲得する。

 

【対局VTR】

◇第1局 7月1~2日(愛知県豊橋市「ホテルアークリッシュ豊橋」) エース戦法の角換わり腰掛け銀で挑んだ先手の藤井が積極的に踏み込んで攻めまくり、地元で快勝した。初日の封じ手の場面では、封筒を脇息(きょうそく)に置いて署名する「新手」も披露。初めて体験する2日制7番勝負を白星で飾った。

◇第2局 7月13~14日(札幌市「ホテルエミシア札幌」) 先手の木村が相掛かりに誘導。お互いに時間を使う展開で、藤井は初めて「封じ手」を体験。2日目の夕方、木村がようやくペースをつかんで攻勢に出たが、寄せ損ねる。劣勢から反撃に転じた藤井が、大逆転で2連勝。