菅義偉首相(71)が26日、召集された第203臨時国会の衆参各本会議で、就任後初めて所信表明演説を行った。地球温暖化対策に関して2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする脱炭素社会の実現を目指すなどを宣言したが、就任から40日後と異例に遅れた初の所信表明で目新しい政策はなかった。日本学術会議の任命拒否問題には言及されず、野党側からは批判の声が上がった。

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首相就任から40日後と異例の先送りとなった初の所信表明演説は、待たされた分だけ肩すかしの感が大きかった。安倍晋三前首相が多用した歴史上の人物やエピソードもなく、実直に基本政策や方針を語った。新型コロナ対策、コロナ禍の経済、自身が総務相時代に創設した「ふるさと納税」、来夏の東京五輪・パラリンピック、不妊治療、外交、携帯電話料金の値下げなど幅広い政策提言を約24分間、一気に読み上げた。

だが、いずれも9月の総裁選から訴えている耳慣れたものばかり。「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする。脱炭素社会の実現を目指す」と宣言したが、具体的な工程表は示されず、秋晴れの清々(すがすが)しさの中、手応えのないスカスカ感が残った。

首相就任から40日後の所信表明演説は、01年以降では政権交代で誕生した民主党鳩山由紀夫首相と並ぶ。同じく政権交代した第2次安倍晋三内閣の31日後を上回る。政権交代以外では10日前後で行われるのが通例だけにベトナム、インドネシア訪問(18日~21日)があったとはいえ、異例のスローペースだ。

野党の追及は厳しい。立憲民主党の福山哲郎幹事長は「20年以上、国会にいますがこんなに中身のない、そして何も感じられない所信表明は初めて」と酷評。「期待外れ。体温が低い印象」と国民民主党の玉木雄一郎代表も冷ややか。日本学術会議が推薦した任命を拒否した問題に触れなかった点に「都合の悪いことは隠蔽(いんぺい)する。言及しない。安倍政権を非常に悪い点で引き継いでいる」と福山氏は切り捨てた。

スローな所信表明演説でも政策を実行し、実効性あるものを、いつまでに実現できるのか。そのスピード感が求められている。【大上悟】