新型コロナの持続化給付金、家賃支援給付金を総額1549万円だまし取ったとして詐欺罪に問われた経産省の元キャリア官僚、桜井真被告(28)と新井雄太郎被告(28)の初公判が11日、東京地裁(浅香竜太裁判長)で開かれ、ともに「間違いありません」と起訴事実を認めた。

拘留中の桜井被告は上下グレーのスエット姿。「新井君らに迷惑をかけ、申し訳ない気持ちでいっぱいです。申し訳ありませんでした」と頭を下げ続けた。2人は慶応高校ゴルフ部で知り合った。腐れ縁となったのは、桜井被告が知人に対し5000万円の損害賠償を求めた民事訴訟で、司法試験にも合格している新井被告が間に入り、相手方に「偽証した方がいい」と持ち掛けたところを録音されてしまったからという。桜井被告は「何やってんだ。お前のせいで民事訴訟に負けそうだ」と激怒。以来、新井被告はことあるごとに桜井被告に責められ、頭を上げられなくなった。

桜井被告は慶大卒業後、メガバンクを経て、2018年に経産省に入省。東大に進んだ新井被告は2020年に入省した。2人は「新桜商事」「バートゾーデン」というペーパーカンパニーを設立し、新型コロナで大きな被害を受けたとして新桜商事名義で家賃支援給付金549万円、持続化給付金200万円。バートゾーデン名義で家賃支援給付金600万円、持続化給付金200万円を詐取した。

謀議の場となったのは経産省地下3階のボイラー室前で、昨年12月、桜井被告は「お前のけつふきだ。家賃支援給付金を調べておけ」と命じた。今年1月の仕事始めに新井被告が新桜商事分を申請したことを伝えると、桜井被告は「バートゾーデンは600万円。マックスでやれよ」と言ったという。

桜井被告は都内の家賃50万円のタワーマンションに住み、同居する交際女性に月150万円の小遣いを渡していた。女性のクレジットカードもバートゾーデンが支払っていた。桜井被告は詐取した金で三越で598万円の腕時計を購入した。

派手な生活ぶりに今年6月、警視庁の内偵が入ったことを知ると、桜井被告はドン・キホーテでドリルとハンマーを購入。新井被告を呼び出し、経産省の地下で証拠を隠滅しようとしたが、うまくいかず、高級外車で横浜・山下公園に行き、スマホなどを山下埠頭(ふとう)から海に投棄したという。

2人は7月、経産省を懲戒免職となった。桜井被告は裁判長に職業を問われると「無職でございます」と答えた。保釈中の新井被告はスーツにネクタイ姿。廷内で2人は視線を交わすこともなかった。