大阪市北区の繁華街・北新地にある雑居ビル4階の心療内科クリニックから出火し、24人が死亡した火災で、大阪府警は19日未明、現住建造物等放火と殺人の疑いが持たれている男を、住所職業不詳の谷本盛雄容疑者(61)と特定した。火災で重体になっている。

谷本容疑者がかつて勤務していた大阪市内の板金工場の社長(78)が同日、取材に応じ、容疑者が父親の板金工場を継げなかったことに不満を募らせ、「離婚」についても納得できない様子だったことを明かした。

市内で板金工場を経営し谷本容疑者の父をよく知る社長は「(父は)すごく厳しい人やった」。容疑者は高校卒業後、父の下で職人の道へ進んだ。職人ではなく、会社員だった兄が工場を継いだ。その後、父が亡くなり、数年、兄とともに工場で働いていたが「何度か衝突して飛び出したようだ」。その後、職を転々としたが、02年から10年まで、1度職を離れた期間があったものの、長らく社長の工場で働いた。

兄の経営する工場を辞めたことについて「『兄貴が帰ってきたから』としか言わなかったが、不満そうだった」と振り返った。仕事ぶりは真面目だったが「職人気質の男で性格的に短気やった。私がアドバイスすると顔を真っ赤にして『なんでや!』と口を利かなくなることもあった」。

社長のもとで働いているときに離婚した。普段は私生活のことを話すことはなかった谷本容疑者は「うまいこといかん」と打ち明けたという。社長は事件について「仕事に対する度胸はあったが、こんなことをするとは…」と肩を落とした。【松浦隆司】