藤井聡太竜王(王位・叡王・王将・棋聖=20)が初防衛を目指して広瀬章人八段(35)の挑戦を受ける、将棋の第35期竜王戦7番勝負第5局(福岡県福津市「宮地獄神社」)が26日、行われた。25日午前9時からの2日制で始まった対局は、26日午後6時34分、先手の広瀬が133手で藤井に逆転勝ちした。対戦成績を2勝3敗として、かど番をしのいだ。

一度は藤井に傾きかけた形勢を広瀬がひっくり返した。途中までは、優勢に局面を進めてながら敗れた第3局と同じ相掛かりを採用した。序盤は持ち時間を使わずに飛ばして指す。中~終盤は時間を使い、じっくり腰をすえて局面を読んだ。「変化がいろいろある中で、こちらの玉が寄せられる変化も水面下であり、苦しい時間もありました」。

サッカーなら右サイドにあたる1~3筋の突破に望みを託した。「攻め合いにして1手勝ちになる変化も多いし、勝ってもおかしくないと思っていました」。思い切って踏み込んだ。局面がよくない時に首をガックンとさせる相手のしぐさを見ながら、最後まで冷静に正確に藤井陣を寄せていった。

「勝負の世界に絶対はない」。W杯カタール大会の日本対ドイツ戦を見て、思いを強くして24日に現地入り。接戦の末に第1局以来の勝利をつかんだ。

「1つしのいだという形で、まだまだ苦しいスコアに変わりはありません。しっかり準備できればと思っています」。終局後、気を引き締めていた。

4年前の竜王戦、同じ2勝3敗から巻き返し、最終第7局まで持ち込んでの逆転で羽生善治竜王からタイトルを奪った。3勝3敗に追いついたのは、今回の第6局(12月2、3日)と同じ鹿児島県指宿市「指宿白水館」だった。

2勝目を挙げた宮地獄神社は、夕日が玄界灘に続く参道を幻想的に照らす「光の道」で知られている。福岡から鹿児島へ。広瀬にとっては4期ぶりの復位をかけた「勝利への道」へとつなげたい。