晴天の9日、神奈川・横須賀市では今年3月までに20歳になる“新成人”を対象に「令和4年度 二十歳のつどい」が実施された。

会場は京急汐入駅前の横須賀芸術劇場大劇場。昨年は汐入駅前のロータリーで暴走行為を繰り返した20歳の男性らが道交法違反で逮捕された。今年は市と横須賀署が事前に対策会議を開いて、警察官35人体勢で会場周辺の厳重警備にあたったこともあり、大きな騒ぎは起こらなかった。

華やかな振り袖、紋付きはかまの晴れ着の新成人でごった返す汐入駅前には制服警官、機動隊バス、パトカー、白バイが配備される異様な光景だった。駅前ロータリーはバスとタクシーしか乗り入れができず一般車両は進入禁止となっている。昨年の成人式ではオートバイ4台と乗用車1台に分乗した計14人が信号無視と蛇行を繰り返し2人の逮捕者まで出る事件となった。

昨年は警察官がまったく配備されていなかったが、式典会場周辺での蛮行が繰り返されないようにロータリー出入り口には車輪付きのバリケードが設置され、関係車両の出入りの際だけ解除するという厳重ぶりだった。市広報担当者は「横須賀市の成人式は例年荒れていなかった。ただ、昨年に限って残念な結果になったので、警察と入念に準備しました」と話した。

横須賀市で今年3月までに20歳になるのは男性2362人、女性1823人で対象者は計4185人だった。昨年度より202人減少した。「二十歳のつどい」の参加者の中で目立っていたのは鮮やかな紫ののぼり旗を持っていた男性だった。染め抜かれた文字は「戸嶋主義」と記されていた。何を主張したいのか?

これは「しゅぎ」ではなく「かずよし」と読む本名だった。父義聡(よしあき)さん(51)も戸嶋さんの晴れ姿を撮影するためカメラマンとして同行し「ちょっと酔っぱらった勢いでこの名前を考えた。出生届を提出したあとで『ああ、しゅぎ、って読めちゃう』と気付いた」と笑って話し「市内の飲食店で真面目に働いています。自慢の息子です」と胸を張った。

戸嶋さんは「とにかく目立ちたかった」と言い切り「オレ、暴れないッスよ。横須賀で生まれて育った。気持ちのいい門出にしたかった。暴走行為なんてもってのほか」と話した。のぼりは甲子園優勝旗のように縁飾りが施された特注品。「12月に思いついた。20歳の記念だし、この式典だけのためのもの。5万円でした」と戸嶋さんはのぼり旗をさすった。

警察官で封鎖されたロータリーには空ぶかしで爆音をまき散らしたオートバイは車両数台出たがそのまま通り過ぎていった。走り去った車両の後方からは白バイ警官が追尾して監視もおこたらなった。その様子を眺めていた他の新成人は「あんなうるさい騒音を出して何がやりたいのか」と呆れたような表情を浮かべていた。【寺沢卓】