熱いぜ!新宿の夏、三井ビルのど自慢45回

真夏の超高層ビル街を騒がせる新宿三井ビルの「会社対抗のど自慢大会」の季節が、今年もやってきた。入居企業の親睦や交流を目的に、ビル開業の1974年(昭49)から続くイベントで45回目。近年はハイレベルなパフォーマンスが、ビル外からも注目を集め、メディアにも盛んに取り上げられるなど、親睦や交流の枠を超えた人気イベントとなっている。

「本格的な照明や音響、大勢の観客を前に歌う快感。やみつきになる気持ちよさです」と語るのは、大会の「レジェンド」とも呼ばれる三村英司さん(46)。普段は生命保険会社の課長さんだ。

社内でもカラオケ好きで知られる三村さんが、異動でビル内の支社に支社長として赴任したのが3年前の春。若手社員から出場を勧められた。○○社のキャンディーズや大黒摩季、××社の西城秀樹やX-JAPANといった各社の精鋭が、プロ並みの歌唱力と、趣向を凝らした衣装や振り付けで競いあう。職場の仲間も紙吹雪を飛ばし、ペンライトを振って応援する。ビル外からのファンも詰めかけるようになり、今や「会社員の夏フェス」のような大盛り上がりの大会となっている。

三村さんは、十八番の松山千春を選曲して3年連続で決勝進出。1年目は「長い夜」を熱唱する(写真<1>)舞台袖から若手社員が登場、三村さんの衣装を脱がし、肌の露出が多いボンデージ風の衣装へ早変わりさせる(写真<2>)。さらに、ものまね番組のご本人登場よろしく、別の同僚が背後から現れる演出(写真<3>)で、やんやの喝采を浴びた。以後、歌唱力はもちろん、体脂肪率を7%にまで落とした肉体を惜しげもなく披露する「脱ぎ芸」で、「レジェンド」と呼ばれるまでになった。上位に入賞すると翌年の出場資格を失うため、決勝に進む実力と、上位には入らない「ほどよさ」が、連続出場には求められる。そこも「レジェンド」たるゆえんだ。

「当初は『社内の立場もあろうに…』と眉をひそめる人も、いました。でも、出場をきっかけに部下との距離が縮まった。社外の人から『今年も出るのですか』などと声をかけられたり、サインや握手を求められたりして、交流も生まれました」と三村さん。

だが、残念なお知らせがあるという。

「昨年の秋に異動して、三井ビルを離れたので、今年は出場できないんです」。人事異動でレジェンドが退場するのも、オフィス街のイベントならでは。三村さんは「前年を超えるものを求められるプレッシャーから解放されてホッとする半面、張り合いがなくなった寂しさもあります。まぁ、惜しまれつつ去るぐらいがちょうどいいのかもしれませんね」と話す。

大会は21~23日。各日午後6時から9時まで。同ビル55HIROBAで。今年は42社86組がエントリー。23日の決勝には20組が進出する。同日は、ロックシンガーのダイアモンド☆ユカイがゲスト出演する。【秋山惣一郎】