池袋事故遺族が元院長の厳罰求めた署名が29万筆超

会見を開き、署名が29万筆を超えたことを明らかにした、松永真菜さんの夫(中央)(撮影・村上幸将)

東京・池袋で4月に乗用車が暴走して母子が死亡した事故で、松永真菜さん(31)と長女莉子ちゃん(3)を亡くした夫の男性(33)が30日、都内で会見を開いた。

男性は会見で、同様の事故の再発を防止するため、車を運転していた旧通産省工業技術院の飯塚幸三元院長(88)への厳罰を求めて7月20日から集め始めた署名が、30日までに29万1639筆に達したと発表した。また、8月末で終了予定だった署名活動を、9月15日まで続ける考えを明らかにした。

男性は「単純に数字で29万というのは簡単。でも1枚、1枚、皆さんには日々の生活がある中、ポストに出しにいく多大なお手数がかかっていると思う。私と(亡くなった)2人のことを思って、遺族全員に寄り添ってくださる時間を、作ってくださったこと…感謝しかないです。私も、こんなにたくさん、いただけるとは思っていなかった。感謝の念に堪えません」と感謝した。

事故は現在、捜査中だが、警視庁は飯塚元院長を自動車運転処罰法違反容疑で書類送検する方針だ。男性は、まだ何も決まっていないとした上で「2人の命を奪った罪は償って欲しい。12人の人が死傷した事故で、軽い罪で終わる前例を作りたくない。法制度の改正、地方の足など環境面の整備の議論が、もっと行われて欲しい。それが署名をやろうと思った理由。私は妻と子供を心から愛していましたし、何の落ち度もない2人を思うと、心が引き裂かれそう」と現在の思いを吐露した。

今回の事故を受けて、高齢者の運転が危険ではないか? との議論が全国で高まった。ただ、高橋正人弁護士は、飯塚院長が事故前に右足を痛め、つえをついていた状態ながら運転したことを指摘し「飯塚さんに関しては次元が違う。右足が悪いのに、ああいう運転をする。一くくりにされるのは、高齢者にとっていい迷惑」と厳しく言い放った。

男性は「私は高齢者の運転自体に反対しているわけではない。前提として、むしろ高齢者の方々には、車を運転することで快適で豊かな生活を送っていただきたいと思っている」と語った。その上で「高齢化社会に突入している今、法制度、技術、環境面の改善は、どうしても必要。誰もが被害者、加害者になりにくい社会になるべき。そのために、私が出来ることは積極的に取り組んでいきたい」と語った。

警察庁が、高齢者を対象に運転技能を確認する実車試験の導入を検討していることが、一部の報道で明らかになった。男性は「議論がされていくことは、とても大事。一方で、加害者は高齢でつえをついて歩くような状況で、公共交通機関が発達した都内に住みながらハンドルを握ったのは、他人への配慮がなく、制度の問題というより、起こるべくして起きた事故と感じています。だから加害者に厳罰を求めるのは必要」と訴えた。【村上幸将】