宇宙飛行士星出さん「空の上から応援」インタビュー

ラグビーW杯を楽しみにしている宇宙飛行士の星出彰彦氏は、笑顔でボールを投げる(撮影・浅見桂子)

来年の2020年東京オリンピック(五輪)・パラリンピックを宇宙から応援する宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙飛行士星出彰彦氏(50)が30日、日の丸戦士にエールを送った。日本人2人目のコマンダー(船長)として大会期間中、国際宇宙ステーション(ISS)でのミッションに臨む予定の星出氏はJAXAでインタビュー取材に応じ、令和の宇宙開発、ラグビーワールドカップ(W杯)などへの熱い思いを語った。

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-来年の五輪、パラリンピックは宇宙から応援する。野口聡一・宇宙飛行士(54)も米国企業が開発する新型宇宙船に搭乗し、ISSで合流する可能性も出てきた。東京五輪・パラリンピック大会組織委員会からは聖火リレー宇宙アンバサダー(大使)に野口氏とともに任命され、宇宙から五輪を盛り上げる予定だ

星出氏 アスリートたちが挑戦する姿勢。記録や勝利への挑戦。我々も宇宙で挑戦しています。すごく応援してます。野口さんと一緒に空の上から応援メッセージを送ったり、聖火トーチを掲げたりすることができればいいですね。スペースシャトルで初めて宇宙に飛んだのが08年北京、2度目が12年ロンドンで今回が3度目。五輪イヤーには縁があります。

-五輪、パラリンピックに向けて、特に応援している競技はありますか

星出氏 たくさんの競技を楽しみにしていますが、中学時代は水泳部だったので競泳は応援しますね。ソウル五輪競泳で背泳ぎ100メートル金メダルを獲得した現スポーツ庁長官の鈴木大地さんは、自分にとってヒーローでした。ISS内のモニターで大会本番の模様を観戦したい。

-初めての宇宙となった08年は日本人として初めてロボットアームを駆使し、日本の実験棟「きぼう」をISSに取り付けた。12年の2度目は124日間の長期滞在。3度目となる今度のミッションは、日本人として若田光一氏(現JAXA理事)以来、2人目のISSコマンダーの大任だ

星出氏 08年、12年に続く3度目のミッションで今年、出発の予定です。でも、ISS滞在期間中にどんな実験をやることになるのか、私自身もまだ知らないんですよ(笑い)。日本棟では創薬のために無重力を利用した「良質なタンパク質の結晶」を作る実験や、宇宙空間でマウスを飼育し、骨密度低下を研究するなどを継続していきます。

-スポーツマンとしての横顔も知られている。08年のISS滞在中には持ち込んだラグビーボールを無重力でパスしてみせた。12歳から全寮制の茗渓学園(茨城)に入学し、留学中のシンガポールでラグビーに出会い、慶大理工学部では体育会ラグビー部でスクラムハーフだった

星出氏 宇宙飛行士だけでは何もできない。宇宙ではチームワークがカギになります。結束力や犠牲的な精神、みんなが同じ目標に向かって挑戦を続ける。ラグビーと同じだと思う。

-東京五輪に先駆けて、ラグビーW杯2019日本大会が9月20日から、いよいよ開幕する

星出氏 前回大会の南アフリカ戦は深夜、自宅のテレビで日本代表のジャージーに着替え、ビールを飲みながら応援した。前半開始10分ぐらいで「何か違う」と感じて大興奮し、最後は泣きながら見つめた。今回も、もちろん応援しますよ。【取材・構成 大上悟】

◆星出彰彦(ほしで・あきひこ)1968年(昭43)、東京都世田谷区生まれ。慶大理工学部卒。92年にJAXAの前身である宇宙開発事業団(NASDA)の宇宙飛行士候補に選抜される。08年6月にスペースシャトル「ディスカバリー号」に搭乗、日本人初のロボットアームのミッションなどを担当。12年7月からISSに124日間の長期滞在した。