台風15号被害で延期望む声も…君津市議選スタート

君津市内の清和公民館では、停電で発電機を使用し期日前投票がスタートした(撮影・近藤由美子)

千葉県を中心に大きな被害をもたらした台風15号の通過から、16日で1週間が経過した。一部地域で停電や断水が続く中、22日投開票の君津市議選(定数22)の期日前投票が始まった。

掲示板修理が遅れ、25人の立候補者を十分認識できないまま、投票する人がいる一方、被災者を考慮して、政策のアピールを控える候補者が存在する。それぞれが複雑な気持ちを抱えたまま、選挙戦に突入した。

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期日前投票所は市内に5カ所設置され、停電と断水が続く清和公民館には十数人が訪れた。同公民館は災害支援拠点でもある。ほの暗い室内で、投票スペースだけが発電機で明るく照らされていた。職員は災害対応で手いっぱい。選挙対応には、県職員など他自治体からも応援に駆け付けた。

有権者や立候補者の間から特例で選挙の延期を望む声が上がったが、27日に任期が切れるため、予定通り、22日に投開票が行われる。「コインランドリー帰りに寄った」という60代の無職男性は「27日に市議の任期が切れるから、しょうがない」とあきらめ顔。一方で「被害が大きい立候補者は大変。不公平だと思う」と指摘した。

台風で掲示板205カ所のうち、85カ所が壊れた。告示は15日。市担当者によると、同日中に掲示板をすべて直したという。告示翌日のこの日午前、市役所で投票した60代夫婦は「このような時だから延期してほしかったが、地域の代表を選ぶので来た」と説明。一方で「ポスターを全部見られなかったから、立候補者の顔も、何人いるかも、ここに来るまで分からなかった」とため息をついた。

元々、1週間と短い選挙戦だが、急きょ戦略を変えざるをえない立候補者もいる。ある立候補者は活動時間を午後6時までに2時間短縮。選挙カーからはお見舞いの言葉と、困ったことがあれば行政との橋渡しをすると語り掛ける。政策は訴えない。スピーカー音量もいつもより落とした。

同立候補者の選挙事務所は台風で屋根が飛び、ブルーシートで覆っている。はがき約500枚、資料や写真、コピー機が、雨にぬれて使えなくなった。コピー機は買い替えた。今も停電が続く。発電機を用意したが、必要最低限で使用するため、室内は暗い。関係者は「物理的に間に合わないし、政策をアピールしたかったが、この状況ではしょうがない。候補者の自宅の屋根も飛んだりと誰もが被害にあっているが、今は『お願い』なんてできない。被害に対するお見舞いしかできない」と話した。【近藤由美子】

○…君津市によると、16日現在、約3900世帯で停電が続く。断水世帯数は不明、建物被害は調査済みの家屋だけで約1160世帯に及ぶ。市は選挙PR手法について「防災無線でも行っていたが、今は本来の目的である防災に使用している。チラシ1500部を作ったり、選挙公報やSNSなどで投票を呼び掛けていますが、もちろん、災害対策が最優先です」と強調する。4年前の前回投票率は過去最低の58・07%だった。市は「今回、復旧に時間がかかる現状では厳しいのでは」と、ワースト更新の危機感を募らせている。