新宿駅で死亡男性はブラサカ元日本代表石井宏幸さん

新宿駅で2日夜にJR山手線と接触し、亡くなったブラインドサッカー元日本代表の石井宏幸さん(フェイスブックより)

JR新宿駅で2日夜、線路脇に横たわっていた男性が電車と接触して死亡した事故で、警視庁は3日、男性の身元を東京都豊島区の会社役員石井宏幸さん(47)と確認したと発表した。

石井さんは全盲で、ブラインドサッカー元日本代表選手。日本ブラインドサッカー協会創立メンバーで同協会副理事長を04年から8年務めるなど、ブラインドサッカーの普及に尽力した。

石井さんが電車と接触したのは2日午後7時15分ごろ。複数の目撃者によると、石井さんは白杖を持ってホームで電車を待っていたが、山手線の大崎発外回り電車がホームに入る直前、線路に下りたという。現場には転落防止用のホームドアはなかった。警視庁新宿署は当時の状況を調べている。

石井さんはイベント企画及び運営や障がい者支援などを行う会社の代表取締役を務めており、視覚障がい者のホーム転落事故防止活動にも従事していた。

石井さんは病気で28歳だった00年に失明。元々、サッカー好きだったが、02年にブラインドサッカーに出会った。日本代表として活躍し、日本選手権では実行委員長も務めた。日本ブラインドサッカー協会は3日、「常に新しいことにチャレンジし、既存の枠を超えて活躍されていた故人のご冥福をお祈りし、謹んでお知らせ申し上げます」と突然の死を悼んだ。

石井さんのフェイスブックによると、プライベートではキャンディーズのファンで、最後に更新された9月26日のフェイスブックでは「伊藤蘭さん出演のNHK『うたコン』スタジオ観覧に当選して行ってきました!」と報告。会社のホームページでは、キャンディーズの解散40周年記念イベントを代表として開催したとつづっていた。

○…亡くなった石井宏幸さんは、ブラインドサッカーを描いた平山譲氏の小説「サッカーボールの音が聞こえる」の主人公のモデルとなった。小説には、東京オリンピック(五輪)・パラリンピックが開催される20年に実写映画化する企画があり、18年6月から9月まで製作費を募るクラウドファンディングも行われた。日本障がい者サッカー連盟会長を務める、サッカー元日本代表の北沢豪氏も支援したが、目標の1080万円を大きく下回る148万7000円しか集まらなかった。事務局は7月に、脚本の第1稿完成後、関係者間で脚本の更新、製作体制の構築が続き、進行が遅れていると発表していた。