吉野氏感謝、久美子夫人暴露…二人三脚ノーベル賞

ノーベル化学賞を受賞した吉野彰さん(左)は久美子夫人と見つめ合いながら笑顔を見せる(撮影・浅見桂子)

ノーベル化学賞を受賞した旭化成名誉フェローで名城大教授の吉野彰氏(71)が、受賞から一夜明けた10日、久美子夫人(71)と都内で会見を開いた。吉野氏は、京大時代に出会った夫人から野菜嫌いなどを暴露されてタジタジになるも、80年代から研究、開発を続けたリチウムイオン電池がノーベル賞に結実するまで、二人三脚で走り続けた妻に感謝。「もう少し大事にしておけば良かった」とねぎらい、深い愛をのぞかせた。

吉野氏は「私も妻もシャイなので、プライベートを答えることはヘタクソ」と言い、照れ笑いを浮かべた。顔はおでこまで真っ赤だった。

吉野氏は京大の学生だった頃、考古学サークルの交流会で、京都女子大の学生だった久美子夫人と出会った。「その(集まった学生の)中の1人が彼女。追っかけというのか、私の方がのぼせ上がった」と一目ぼれだったと明かした。

久美子夫人は、結婚当時、夫がノーベル賞を受賞すると思ったか? と聞かれると「私はサラリーマンの人と結婚するんであって、学者の妻になろうとは思っていなかった」と笑った。考古学を通じて出会った“高学歴カップル”だったが、少なくとも久美子夫人にとって、ノーベル賞は浮世離れしたものだった。「もっと、ちゃんと何もかも、しっかりやっておくんだったと思っています。生活から含めて、もう少しサポートの仕方があったとか?」とも口にした。

その言葉とは裏腹に、夫の健康は常に考えてきた。「好き嫌いは激しい。体のために緑黄色野菜を取って欲しいのに『もう食べたから、いい』と食べない」。さらに「たばこも体に悪いのに、『やめたらストレスを抱えて他の病気になる』と隠れてたばこを吸っている」と、夫の不摂生を暴露した。吉野氏から「私は、もう少し大事にしておけば良かったな」と言われると「『お疲れさまでした』は、まだ変? 健康に十分気を付けて下さい」と返した。

受賞の対象となったリチウムイオン電池の研究、開発に80年代から取り組んできた中で、最も苦労が見えた時期は? と質問が飛んだ。久美子夫人は「枕に髪の毛がいっぱいくっついていて、あれ? と思った。ストレスからくるものかなと思ったことがあった」と語った。吉野氏は「研究で一番苦しかった33~34年前。開発過程で問題点が次々、出てきて辛抱強く解決策を考えないといけなかった」と振り返った。

吉野氏は研究、開発はマラソンに似ており「必ずゴール、宝物があると自信が持てれば乗り越えられる」と語る。ノーベル賞まで二人三脚で走ってくれた妻とのフォトセッションで「見つめ合って!!」とリクエストされると「ヒエー!!」と声を上げ、笑った。【村上幸将】