芝野虎丸名人、王座戦は持ち時間が「へんな感じ」

感想戦を行う芝野虎丸名人(撮影・松浦隆司)

囲碁史上初の10代名人となった芝野虎丸名人(19)が25日、大阪市内のホテルで行われた第67期王座戦5番勝負の第1局で井山裕太王座(30)に271手で黒番半目勝ちし、先勝した。

新星VS絶対王者。囲碁界の今後を占う戦いの第1ラウンド。芝野は第44期名人戦7番勝負で張栩(ちょう・う)名人を破り、8日に名人となったばかり。名人として臨む初のタイトル戦の相手が、2度の7冠独占を果たすなど君臨してきた絶対王者・井山だった。

中盤まで微差の形勢が続き、芝野がわずかにリードすると、井山がすかさず盛り返す。王者の意地と若手の勢いが盤上でぶつかり合った。接戦を制した芝野は「打ちにくくしたところがあった」と反省した。

大盤解説会に井山とともに飛び入り参加すると、ファンに笑顔を見せた。2日間にわたって行われた名人戦に比べ、王座戦は持ち時間が3時間だったことについて質問されると「メッチャ、短かったです。なんか名人戦に慣れちゃって、へんな感じがしました」。10歳年下の挑戦者に井山は「短く感じたって言うわりには強かったですね」と笑顔でツッコミを入れると、会場は笑いに包まれた。

現在、井山は7大タイトルのうち、王座、棋聖、本因坊、天元の4つを保持し、これまで「井山一強」時代を築いてきた。今後は、1強状態を20歳前後の芝野ら新しい世代が崩そうとする構図だ。

「虎丸」。囲碁棋士で兄の龍之介二段(21)と対になる漢字として両親と祖母が命名した。「虎」だけだとイメージが怖すぎるため、優しい雰囲気の「丸」が足されたという。プロ野球・阪神タイガースファンが多い大阪で先勝した虎丸名人。11月16日に甲府市で行われる第2局へ、勢いを増した。【松浦隆司】